研究課題/領域番号 |
19K06854
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
井田 崇 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (00584260)
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研究分担者 |
高梨 功次郎 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (10632119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 送粉者 / 植食者 / 送粉効率 / 資源分配 / 毒性花粉 / 繁殖成功 / アルカロイド / 毒性花蜜 / ポリネーション / ポリネーター / 空間構造 / 遺伝構造 / トリカブト / 空間分布 / 適応度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,未だはっきりしない有毒花蜜・花粉の送粉共生系における役割と,それが植物の繁殖成功にフィードバックする効果を明らかにする.また,有毒花蜜の量的・質的変異が機能するスケール(個体群間・個体群内・集団内遺伝構造等)を特定する.そして,有毒花蜜(や花粉)変異と植物個体群の送粉者の頻度や組成を照らし合わせ,有毒花蜜への選択圧を評価する.生物間相互作用に関与する化学因子に着目し,植物が生産する有毒物質等のメカニズムを解析する化学生態学と,形質進化を取り扱う進化生態学を統合することで,植物の化学防御形質の進化と,その生態系での機能,そして繁殖成功(適応度)を繋ぐ枠組みを提案することを目指す.
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研究実績の概要 |
送粉共生系における有毒花粉や有毒花蜜の重要性と,それが植物の繁殖成功にフィードバック効果の解明を目的とする.対象であるトリカブトはシカも忌避するほどの毒(アルカロイド)をもつ植物であり,他の多くの植物がシカによる甚大なダメージを受けている中,食害から逃れている.一方で,毒は一般には植物を利用する敵対的な関係でない生物,送粉者昆虫などにも忌避効果を持ち,植物の繁殖成功を下げてしまう.本研究ではこの毒生産に着目し,送粉生態系への影響を評価することで目的にせまった.植物の形質により,敵対者である動物を忌避しながら送粉者など植物に有益な動物のみを得ていることを示すため,まず毒形質と送粉者活性について調査した.その結果,主要な送粉者であるマルハナバチに対して主として提供している花蜜には毒が含まれていないことがわかった.一方で,マルハナバチは花粉も集積しており,事実体表花粉からトリカブトの毒が検出された.このことから少なくとも短期的にはトリカブトの毒は送粉者昆虫に影響しておらず,敵対者排除しながら有益な昆虫を引き入れていると言える.しかし,実際に致死量に至る毒花粉を巣に持ち帰っていることから長期的な負の影響は予期されるが,本研究ではそこまでは検証できていない.また,植物の形質は異なる要求やそのトレードオフにより毒形質には変異が生まれるかもしれない.こうした変異は環境要因の違いによって生じることから,個体群内の植物の空間的な分布に着目し,植物の成長・繁殖形質,毒形質,遺伝形質の連関を明らかにすることで,変異を検証した.植物の形質に加え,植物個体群の遺伝構造は,通常のSSRマーカーの開発やMIG-seq法による個体(ジェネット)識別を試みたが,十分な精度で成功しなかったため,Microsatellite capture sequencing(MiCAPs)法を用いた解析により解析している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍以降,業務の進捗が滞りがちではあるが,特に新たな遺伝解析方法を試しており,様々な有識者や協力者に相談しながら行い,また分析については一部外注したりすることから,進捗は遅れている.修正後の予定では2023年度で終了する見込みであったが,2023年度末にようやく予備実験結果が手に入り,どうにかこの方法により残りの分析を進める目処がたった状況である.植物のその他の形質(形態的,生理的,地理的な情報)はすでに取得済みであることから,残りの時間は遺伝分析に集中しとりまとめる.本研究中に付随した,植物のフェノロジー戦略や環境変動への応答など興味深い結果の一部は既に国際誌に発表済みである.こうした発展的内容についても成果として挙げていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
植物の遺伝構造を明らかにするために,MiCAPs法を用いた遺伝分析を進める.具体的には,2023年度末に予備的分析が終わったので,この結果について解析を行い,多型性の高いSSRマーカーを設計する.設計されたマーカーを用いて,すでに調査地においてサンプリング済みのサンプル(すでに遺伝情報を除く植物形質や位置情報は取得済み)の分析を集中的に行い,ラメットやジェネットの遺伝構造を評価して,空間情報,毒や繁殖形質などの情報との連関を解析する.すでに解析済みの毒形質と送粉者昆虫との相互作用の理解,および個体群内の遺伝構造の理解を統合的に解析し,毒といった植物の形質に端を発した生物間相互作用網を明らかにし,毒形質の生物間相互作用や植物の繁殖成功への波及的な効果,また物理的,生物的環境に応じた変異を調べることで,形質進化や個体群動態を明らかにする.これらにより,送粉生態系や草食の大型哺乳類を含めた生態系全体における生物間相互作用において,毒が果たす役割を明らかにする.以上の解析を終わらせるとともに,学会発表や論文発表により学術成果の公表を行う.
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