研究課題/領域番号 |
19K06858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 神奈川大学 (2021-2022) 東京都立大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
永島 咲子 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (20637037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 環境型 / 光合成反応中心 / シトクロム / 膜タンパク質 / 分子認識 / 電子伝達 / 共進化 / 塩ストレス / 進化 / 適応放散 / 光合成細菌 / 16S rRNA / 環境ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
酸素非発生型光合成細菌であるPorphyrobacter属の細菌群は近縁種の中でも特に生育環境が多様な系統群であり、それぞれの環境に適した系統に進化した適応放散の好例である。Porphyrobacter属の好熱性の細菌ではタンパク質を高温下で安定化させるために特定アミノ酸が増えると指摘されている。また、光合成反応中心の系統解析では16S rRNAとは異なり、好熱性と海洋性の細菌群が近縁としてクラスターを組み、生育環境によって異なる系統の細菌の光合成器官が同じ傾向の進化を受けているという仮説を得るに至った。本研究では、これを確かめるために、環境サンプルのゲノム解析と単離、系統解析を行う。
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研究実績の概要 |
Erythrobacter属の光合成細菌はほとんどが海洋性である近縁他属の細菌群と異なり、海洋・淡水・温泉など多様な環境に生息することが知られる。本研究ではErythrobacter属の適応放散の特性を調べるために光合成器官の系統解析を行ってきた。その結果、光合成反応中心複合体(RC)には、特に淡水性の種で平行進化の傾向が見出された。海水の環境から淡水へと新しい生態学的ニッチを利用可能とする適応進化がRCにも起きていると考え、特に近縁で生息域の塩濃度が異なる2株を中心としてRhodobacter capsulatusのRCの立体構造に当てはめて、変異箇所の分布を調べたところ、特定領域に変異の集中が認められた。 2022年度は海洋性と淡水性のErythrobacter属光合成細菌のRCの違いをRCへの電子供与体であるチトクロムとの相互作用にあるとの仮説を立て、系統解析と精製タンパク質の比較の両面から解析を進めた。 系統解析からは、複数のチトクロムの内、膜貫通型チトクロムのチトクロムcyがRCと類似の樹形を示し、RCへの電子供与体としてRCと共に環境に適応進化したことが推察された。また、立体構造を用いた解析からは、淡水性のErythrobacter属細菌ではこのチトクロムcyが海洋性のそれとは異なる結合様式が想定された。主にイオンーイオン相互作用によるチトクロムcyとRCの分子認識が周囲の環境によって影響を受けることで双方に変異がもたらされたとの傍証を得られたことは大きな成果である。RCは光合成細菌の分子進化の重要な指標とされることから、環境要因によって実際の系統進化と異なる樹形を得る可能性とその傾向が明らかとなればより精度の高い解釈が可能となる。 系統解析から得られた進化モデルを実証するために、精製タンパク質による再構成実験を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Erythrobacter属のRCの環境型がチトクロムcyとRCの分子認識の違いによるものとの傍証を得られたことはErythrobacter属に限らず、他の光合成細菌でも想定される進化的要因であることから、大きなインパクトがあり、詳細な実験によって確かめられなければならない。これまで精製タンパク質による再構成実験に取り組んでいるが、明確な結果が得られていない。好気性光合成細菌の光合成器官は発現量が少なく、発現量を増やす条件についての知見が少なく、遺伝子組換えの系が確立されていないことが障害となっている。 また、光条件の検討や大量培養を計画しているが、そのために増設予定の培養装置の入荷が資材不足から大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
大量培養による試料の増量を行うとともに、抗体を利用して検出方法を増やすことで実証を目指す。 系統解析では、より多くの菌株を対象に仮説の普遍性を検証する。また、これまで進めてきた、既知の結晶構造解析を基にした結合モデルによる結合様式の予測解析に、タンパク質構造予測モデルを組み合わせさらなる解析も試みる。
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