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精神疾患関連遺伝子から探る現生人類における社会の変化・発展の遺伝的基盤

研究課題

研究課題/領域番号 19K06866
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分45050:自然人類学関連
研究機関九州大学

研究代表者

早川 敏之  九州大学, 基幹教育院, 准教授 (80418681)

研究分担者 颯田 葉子  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (20222010)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
キーワード人類進化 / 精神疾患 / 進化医学 / 文化進化 / 精神機能 / 脳 / 社会 / 文化
研究開始時の研究の概要

統合失調症と双極性障害は、高度な精神活動にもとづく社会性の障害である。このため、それら精神疾患に関わる遺伝子は、現生人類の社会性にとって特に重要な遺伝子とみられる。本研究では、それら精神疾患に関わる遺伝子群における適応進化を、社会や文化の変化からのストレスと精神疾患発症との関係から紐解くことで、現生人類における社会・文化の変化・発展の遺伝的基盤の解明を目指す。

研究実績の概要

精神疾患は高度な精神活動にもとづく社会性の障害である。精神疾患の中でも統合失調症や双極性障害は、遺伝リスク因子(発症リスクに関わるSNP)と環境リスク因子(特に社会・文化の変化に起因する心理社会的ストレス)の相互作用により発症リスクが決まる。このため、それら精神疾患の発症リスクに関わるSNPの非リスク型に働く正の自然選択は、心理社会的ストレスへの適応とみられる。そこで本研究では、それら精神疾患の発症リスクに関わる遺伝子座を対象に、非リスク型に働く正の自然選択を示す遺伝子座を同定し、その後それらの進化を調べることから、“社会・文化の変化・発展の遺伝的基盤としての心理社会的ストレスへの適応”を検証する。
ST8SIA2遺伝子のプロモーター多型は、プロモーター活性の異なるプロモータータイプを構成し、統合失調症の発症リスクに関わる。プロモータータイプの頻度をもととした集団でのプロモーター活性(population promoter activity;PPA)は、人類の拡散にともなって減少傾向を示している。非リスク型のプロモーター活性がリスク型に比べて低いことから、この減少傾向は、心理社会的ストレスへの適応が人類の拡散にともなって起こっていることを意味する。心理社会的ストレスには、移住による異文化交流ストレスがあり、この拡散(移住)にともなった適応は、先住者との文化交流が生存上有利であったことを示唆し、我々の進化において他者との協調性に選択が働いていることを初めて提示する。さらに、このST8SIA2遺伝子と同様の心理社会的ストレスへの適応を他の遺伝子座においても見出し、心理社会的ストレスに対するポリジェニック適応がおこっているとみられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、統合失調症と双極性障害の発症リスクに関わるSNPをもつ遺伝子座群を対象に、1)対象遺伝子座の非リスク型に働く正の自然選択、2)対象遺伝子座の霊長類における進化、3)選択の働くSNPの機能差、の3つの課題に取り組んでいる。2021年と2022年に、双極性障害および統合失調症に関わる遺伝子座群が新たに報告されたことを受け、対象遺伝子座群の大幅な拡張を行い、非リスク型に働く正の自然選択を示す遺伝子座を複数同定するとともに、選択がヒト系統独自におこっていることを見出してきている。また、これら遺伝子座において、ST8SIA2遺伝子と同様の進化を示すものをアレルの機能差をもとに同定する新たな手法を開発し、ST8SIA2遺伝子と同様の進化を示す遺伝子座を同定してきている。このようにすべての課題について成果がみられ、順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

課題を継続し、学会発表や論文執筆・投稿等、成果発表を行う。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Lower promoter activity of the ST8SIA2 gene has been favored in evolving human collective brains2021

    • 著者名/発表者名
      Hayakawa Toshiyuki、Terahara Masahiro、Fujito Naoko T.、Matsunaga Takumi、Teshima Kosuke M.、Hane Masaya、Kitajima Ken、Sato Chihiro、Takahata Naoyuki、Satta Yoko
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 16 号: 12 ページ: e0259897-e0259897

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0259897

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Two-dimensional site frequency spectrum for detecting, classifying and dating incomplete selective sweeps2019

    • 著者名/発表者名
      Satta Yoko、Zheng Wanjing、Nishiyama Kumiko V.、Iwasaki Risa L.、Hayakawa Toshiyuki、Fujito Naoko T.、Takahata Naoyuki
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 94 号: 6 ページ: 283-300

    • DOI

      10.1266/ggs.19-00012

    • NAID

      130007791992

    • ISSN
      1341-7568, 1880-5779
    • 年月日
      2019-12-01
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 現生人類の世界拡散における神経症傾向の抑制2023

    • 著者名/発表者名
      早川敏之、藤戸尚子、寺原匡弘、森谷悠香、手島康介、高畑尚之、颯田葉子
    • 学会等名
      日本遺伝学会第95回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Adaptive evolution of the ST8SIA2 gene in anatomically modern humans2022

    • 著者名/発表者名
      Toshiyuki Hayakawa
    • 学会等名
      Sialoglyco 2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 統合失調症関連遺伝子ST8SIA2から探る現生人類における心理社会的ストレスへの適応2022

    • 著者名/発表者名
      早川敏之、寺原匡弘、藤戸尚子、松永拓己、手島康介、羽根正弥、北島健、佐藤ちひろ、高畑尚之、颯田葉子
    • 学会等名
      第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 統合失調症関連遺伝子にみる現生人類の集団脳(collective brain)の進化2021

    • 著者名/発表者名
      早川敏之
    • 学会等名
      日本進化学会第23回東京大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 現生人類における統合失調症関連遺伝子の適応的側面2020

    • 著者名/発表者名
      松永拓己、寺原匡弘、手島康介、高畑尚之、颯田葉子、早川敏之
    • 学会等名
      日本遺伝学会第92回大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] Interaction between genes and social environments in anatomically modern humans2019

    • 著者名/発表者名
      Toshiyuki Hayakawa
    • 学会等名
      The 14th International Congress of Physiological Anthropology 2019
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Detecting incomplete selective sweeps during modern human evolution2019

    • 著者名/発表者名
      Yoko Satta, Wanjing Zheng, Kumiko Nishiyama, Naoko T. Fujito, Toshiyuki Hayakawa, Naoyuki Takahata
    • 学会等名
      The Annual Meeting of the Society for Molecular Biology and Evolution
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 現生人類における統合失調症への適応2019

    • 著者名/発表者名
      寺原匡弘、藤戸尚子、手島康介、高畑尚之、颯田葉子、早川敏之
    • 学会等名
      日本遺伝学会第91回大会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] 現生人類における双極性障害関連遺伝子の適応的側面2019

    • 著者名/発表者名
      松永拓己、寺原匡弘、手島康介、高畑尚之、颯田葉子、早川敏之
    • 学会等名
      日本遺伝学会第91回大会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] 不完全な正の自然選択を検出する新しい方法について2019

    • 著者名/発表者名
      颯田葉子、Wanjing Zheng、西山久美子、藤戸尚子、早川敏之、高畑尚之
    • 学会等名
      日本遺伝学会第91回大会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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