研究課題/領域番号 |
19K06867
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45050:自然人類学関連
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (10360215)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | チンパンジー / 壮年期 / 老年期 / オトナ雄 / 連合形成 / 狩猟 / 肉分配 / アカコロブス / アルファ雄 / 老齢雄 / 社会関係 / コンソート / 狩猟・肉食行動 / 優劣順位 / 父性的行動 / 孤児 / 生存戦略 / 繁殖戦略 / 食物分配 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの女性が閉経後も長く生存することは、ヒトという種に進化した特徴とされる。実際、雌のチンパンジーは死の直前まで繁殖能力を維持する。一方、雄のチンパンジーは最盛期を越えると優劣順位が降下し、性的競争では不利になるが、生存と繁殖のポテンシャルは維持する。本研究は、野生チンパンジーの成熟雄を対象に、最盛期を終えた雄がゆっくり老化していく時期がもつ適応的意義を探り、ヒト科における老年期の起源を再考することを目的とする。「最盛期を終えた雄は、できるだけ長く生きられる低リスクの生活を選び、低頻度の繁殖機会を積み重ねて生涯繁殖成功を最大化する」という生存・繁殖戦略が明らかになることを期待している。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、マハレM集団の成熟雄チンパンジー約10頭を対象に個体追跡による行動観察を行い、壮年期を過ぎて老年期に移行していく雄が加齢に伴う身体的・社会的衰退にどのように適応しているかを縦断的かつ横断的に探ることである。 特に、1年目(2019年度)の野外調査時にアルファ(=第1位)雄であったプリムスと元ベータ(=第2位)雄のオリオンは同年齢(28歳)の壮年期雄であったため、この2頭の雄の加齢に伴う身体的ならびに社会的な老化を観察することを主軸に調査する予定であった。図らずも2019年末、このプリムスが優劣闘争に敗れ、若い雄テディが新アルファ雄となり、以後の経過が注目されたが、パンデミックが勃発し、2020年度以降の調査は中断した。 現地で観察を続けているタンザニア人によれば、2023年5月現在、21歳の新アルファ雄は安定して地位を維持している。一方、40歳を超える老齢雄2頭は死亡(推定)した。後壮年期となったかつての高順位雄(プリムス、オリオン)及び初老雄2頭(ダーウィン、カーター)は健在であり、4年前とは異なる社会的地位にあると予想できるが、詳細は不明であり、直接観察の再開が必要な状況である。 国内における4年目の研究活動としては、昨年度に引き続き、過去の野外調査資料に含まれるオトナ雄のさまざまな行動データ(敵対的行動、連合形成、近接維持、毛づくろい、狩猟、肉分配、音声等)の整理を進め、成熟雄の各年齢段階による違いを見出すための分析をおこなうためのデータベースを作成している。 本研究のテーマと深く関連する狩猟・肉食行動については、マハレのチンパンジーが主要な獲物種であるアカコロブスに対する集団狩猟のパターンをどのように変化させてきたかを分析し、共同研究者と連名の原著論文として国内英文誌に投稿し、2023年5月に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時の計画では、1年目・3年目の8月上旬~9月中旬に1か月半の野外調査、2年目・4年目の12月下旬~1月上旬に短期野外調査のための海外渡航を入れる予定であったが、2~4年目に海外渡航が延期となり、コアとなる新規データの入手が著しく遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、4年間の研究期間における雄間関係の変容を縦断的に研究する予定であったが、パンデミックによる野外調査の中断という事態に遭遇したため、課題遂行に必要なデータが不足している。期間延長後の2023年度に、1か月程度の野外調査を実行した上で、本研究課題で十分なデータが得られなかった部分については、新たに応募する研究課題の計画調査を作成する際に反映させていきたい。本研究課題としては、すでに良好なデータが入手できている2019年度調査とこれから実施する2023年度調査におけるオトナ雄全頭の行動及び社会関係の変容を比較し、最終成果をとりまとめていきたい。
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