研究課題
基盤研究(C)
アジア人では欧米人と比較して脳血管狭窄による脳梗塞が多いが、その遺伝的背景は明らかでありませんでした。申請者らは東アジアに多い希少難病「もやもや病」の発症に関連する遺伝子(RNF213)の変異がアジア人の脳梗塞の発症に深く関連していることを発見しました。本研究ではRNF213の変異が脳梗塞を引き起こす機序の解明と新たな治療戦略の開発を目的として、血管壁の画像解析や、血液中の血管炎症物質の分析、脳血管病理解析、多施設共同前向き観察研究を組み合わせた多面的な解析を行います。本研究の成果は、脳梗塞領域における遺伝情報を用いたオーダーメイド医療の実現に貢献するものと期待されます。
RNF213 p.R4810K変異が脳梗塞を引き起こす機序解明と治療法開発を目的として下記解析を実施した。①電子カルテ連携型多施設共同脳卒中全例登録システムを構築し(10施設、6000例超)、②MRI脳血管壁イメージング解析にて変異保因者が動脈硬化と異なる血管壁構造変化を有すること、③横断研究により変異保因者は動脈硬化累積リスクが低く異なる機序が存在すること、④ 長期前向き研究により、変異保因者は脳動脈狭窄症の進行が早く、スタチンにより進行抑制が抑制されうること、⑤スタチンのランダム化比較試験サブ解析により、RNF213遺伝子変異保因者に対するスタチンの脳梗塞抑制効果の可能性を示した。
RNF213遺伝子変異は日本人の約2%が保因者であり、脳梗塞の最大の遺伝的リスクである。本研究成果により、RNF213変異保因者の放射線学的、疫学的特徴が明らかとなり、長期追跡調査においても脳動脈狭窄症の進行や脳血管障害の発症にこの変異が強く関連していることが示された。更にスタチンなどの脂質代謝系への介入による進行抑制の可能性が示され、今後の研究のさらなる発展により、東アジア地域全体における脳梗塞リスクの低下につながることが期待できる。
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