研究課題/領域番号 |
19K06934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 富山大学 (2020-2022) 旭川医科大学 (2019) |
研究代表者 |
中島 敏 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (00455792)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 予期的姿勢調節 / 学習 / 予測 / ネコ / 到達運動 / 姿勢調節 / 随意運動 / 高次運動野 / 姿勢 / リーチング / 単一細胞記録 / 投射経路 |
研究開始時の研究の概要 |
私達が意図して行う運動(随意運動)によって体の重心の位置が変わりますが,そこに適切な姿勢調節が働けばバランスを崩して転倒してしまうことはありません.ところが,脳疾患を原因とする姿勢調節の障害は高齢者の転倒の危険を増しています.姿勢調節障害の病態を根本から理解し,適切なリハビリテーション法の開発につなげるため,まずは正常な脳がどのように随意運動,姿勢をコントロールしているのか調べます.具体的には,動物を訓練して標的に向かって前脚を伸ばさせ,前脚の運動そのものに関与する脳活動と,姿勢調節に関与する脳活動を可能な限り切り分け,これら二種類の活動が別々の経路で出力されているという仮説を検証します.
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研究実績の概要 |
ヒトや四足動物は肢による到達運動に先立ち,標的の位置や用いる肢に合わせて異なった予期的姿勢調節をすることが知られています.このような予期的姿勢調節(APA)は学習の影響を受け,学習を通して獲得された予測戦略に左右されると考えられます.予測戦略がどのようにAPAに影響するかを調べるため,3試行(1ブロック)ごとに標的の位置が左から右,あるいは右から左に交代する遅延到達運動課題を2頭のネコに課し,毎試行で標的が現れる前のネコの重心の位置の水平成分(CVP)を測定しました.ブロックのうち最初の1試行をSWITCH試行,後の2試行をSTAY試行と定義しました.標的提示前の遅延期間のCVPを昨年度までよりも対象とする時間幅を広げて解析した結果,どちらのネコにおいてもSTAY試行におけるCVPの動きは標的が右に出ようとしているか左に出ようとしているかで明白に異なりました.ただし個体によってAPAの標的位置依存性が顕著となるタイミングが異なり,一方のネコ(A)では,標的提示時刻が近づくにつれてAPAの標的位置依存性が顕著になってゆき,もう一方のネコ(M)では,標的提示時刻の数百ミリ秒前に標的位置依存性が最も顕著になりました.続くSWITCH試行においては,両方のネコのCVPは直前のSTAY試行よりも直後のSTAY試行に近い動きを示したので,AもMも学習の結果として標的位置の変化を予測しそれに基づいた姿勢調節の戦略をとっていると考えられました(2022年5月のカナダ神経科学学会・トロントにてポスター発表). 最近になり大脳皮質の中でも高次運動野が姿勢制御に果たす役割が注目を浴びています.私達はサルの高次運動野のうち前補足運動野と運動前野から得たデータを解析し,その成果はJournal of Neuroscience誌に掲載されました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
補助事業者自身が国際共同研究A(19KK0414:高次運動野の領域特異的な歩行制御機構の解明)に関連した実験遂行を目的として2022年6月までカナダに滞在したため,その間日本国内での実験が不可能であった.その後も国内における移動制限のため,ネコを用いた侵襲的脳活動記録(旭川医科大学で行う予定であった)を実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
ネコを用いた実験系に関し, (1)申請者が既に旭川医科大学で行った実験については更なるデータ解析を加えて学会で発表済みであり,本年度中に論文として発表することを目標とする. (2)ネコの後頭頂葉,高次運動野,一次運動野にムシモールを微量注入して不活性化した時の到達運動の変化を解析し,それぞれの脳領域の不活性化によって生じた姿勢及び随意運動の調節の障害を特徴づける(旭川医大との共同研究).
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