研究課題
基盤研究(C)
本研究ではマウスモデルを用いて、生理的刺激による神経脱成熟の障害が、うつ病の病態に関与する可能性を検討する。豊富環境飼育による脱成熟誘導を確定し、その障害を示すモデルを探索する。その際、既存のうつ病のモデルマウスを再評価するとともに、脂質生合成経路を障害した新規モデルのスクリーニングを行う。さらに、豊富環境における探索的行動を指標としたうつ様行動の新規評価系を確立し、AAVによる脂質生合成経路等の操作手法を活用して、脱成熟障害とうつ様行動の関係を明らかにする。
研究代表者は、抗うつ薬によってマウス海馬神経細胞が未成熟様に変化する「脱成熟」現象を発見した。本研究では、生理的に生じる脱成熟の異常が、うつ病の病態に寄与する可能性を検討した。個別飼育したマウスに慢性ストレスを負荷すると、活動量の持続的な低下が見られた。運動をさせながら抗うつ薬を投与すると、ストレス負荷したマウスでは脱成熟が生じ、活動量が回復したが、対照群のマウスでは脱成熟は生じなかった。豊かな環境で飼育すると、脱成熟様の変化が誘導され、ストレスによって軽度の行動変化が生じた。以上より、脱成熟が起きにくい環境条件では、ストレスによる行動異常が起きやすいことが示唆された。
本研究の成果はうつ病の病態解明と克服に貢献すると考えられる。本研究で観察した神経機能変化のメカニズムや、変化を生じさせる生体内外要因の理解がさらに進めば、うつ病の予防方法や治療方法の改善に結び付く知見が得られると期待される。特に、ストレスを受けた際に、それを弾き返してうつ病にならないようにする力、つまりレジリエンスを高める方法の開発や、生活習慣の提案に結び付くと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Molecular Brain
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iScience
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