研究課題
基盤研究(C)
メトトレキサート (MTX)は、関節リウマチ治療のアンカードラッグとして、現在広く用いられており、その薬効は免疫抑制及び免疫調節効果に基づくと考えられているが、その作用機序の詳細は解明されていない。本研究は、MTXの作用機序を解明するために、炎症性サイトカインであるマクロファージ遊走阻害因子とその受容体タンパク質CD74複合体形成に及ぼすMTXの阻害作用を、タンパク質間相互作用解析、結晶構造解析により分子レベルで明らかにすることを目的とする。本研究により、免疫調節系におけるMTXの作用機序の理解を深め、より効果的な関節リウマチ治療のための学術的基礎知見が得られると期待できる。
メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチ治療の第一選択薬として広く用いられているが、その作用機序については不明な点が多い。本研究では、MTXの標的タンパク質としてマクロファージ遊走阻止因子(MIF)に着目し、MIFの機能に及ぼすMTXの阻害効果を解析することを目的とした。中性子結晶構造解析とX線結晶構造解析を相補的に用いて、MTXとMIFの複合体形成に重要な水素結合状態を明らかにした。MTX-MIF複合体のX線結晶構造と既報のNMRを用いた受容体CD74の立体構造を用いた計算科学により、MTXのMIFへの結合がMIF-CD74複合体の安定性を低下させることを明らかにした。
関節リウマチ治療におけるMTXの作用機序の一つとして、MTXがMIF-CD74複合体の形成を阻害し、その結果、抗炎症作用を発揮する可能性を示すことができた。今後更に研究を発展させ、MTXの作用機序の理解が進めば、MTXの改良と治療効果の早期評価系の確立に貢献できると考えられる。また、中性子結晶構造解析により、水素原子を含む原子レベルでMIFの立体構造を明らかにすることができた。MIFは多くの炎症性疾患に関与することから、潜在的な治療標的となっている。本研究で得られたMIFの精微な構造情報に基づき、MIFを標的とする新規薬剤開発が可能となることから、国民の健康維持への貢献が期待できる。
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Kidney International Reports
巻: 5 号: 9 ページ: 1595-1602
10.1016/j.ekir.2020.06.026
https://www.gipc.akita-u.ac.jp/~biomolsci/
http://www.gipc.akita-u.ac.jp/~bioanal-str-chem/index.html