研究課題/領域番号 |
19K07047
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
東 昌市 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (10275076)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | MMP-7 / HAI-1 / コレステロール硫酸 / がん転移 / 細胞凝集 / セリンプロテアーゼ / マトリプターゼ / 活性型コンフォーメーション / エンドサイトーシス / ダイナミン / 細胞間接着 / 細胞膜ラフト / プロテアーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
がん細胞表層の膜タンパク質 HAI-1 (hepatocyte growth factor activator inhibitor type 1)が、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断されると、細胞外へ放出されたHAI-1の断片が、がん細胞の細胞間接着を誘導し、その転移能を顕著に増強する。本研究では、HAI-1断片による細胞間接着誘導の分子メカニズムを解明するとともに、細胞間接着の誘導に関わるHAI-1断片機能部位の構造をベースに、細胞間接着阻害剤を設計し、がん転移抑制剤の開発に繋げる。
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研究実績の概要 |
MMP-7は種々のがん組織で高発現しているマトリックスメタロプロテアーゼの一種であり、その発現はがん悪性度と高い相関を示す。私達はMMP-7により、がん転移が促進される機序として以下のことを明らかにしてきた。まず、活性型MMP-7が、がん細胞の細胞膜成分として存在するコレステロール硫酸と結合する。次にコレステロール硫酸と結合したMMP-7が近傍の細胞表層タンパク質であるHAI-1(hepatocyte growth factor activator inhibitor type 1)を切断することで、細胞凝集を惹起する。一方、2021年度までの研究で、MMP-7が誘導する細胞凝集メカニズムにセリンプロテアーゼ活性が介在することが示唆された。 2022年度はMMP-7が誘導する細胞凝集メカニズムにおいてMMP-7の下流で作用すると考えられる、膜型セリンプロテアーゼの候補としてHAI-1の標的酵素の一つであるマトリプターゼを想定し、その活性発現機構の解明を目指して研究を行った。マトリプターゼ前駆体は生合成された後、HAI-1とともに細胞外へ輸送され、細胞外で自己活性化、あるいは他のプロテアーゼにより活性化されることが示唆されていた。そこで、マトリプターゼ前駆体とHAI-1のそれぞれの細胞外領域をHEK293細胞に共発現させたところ、殆ど細胞外へ輸送されないことが判明した。一方、HAI-1細胞外領域を修飾し、インヒビター活性を高めるとともに、マトリプターゼ前駆体のセリンプロテアーゼドメインに活性型コンフォーメーションを誘導する分子を設計し、これをマトリプターゼ前駆体の細胞外領域とともにHEK293細胞に共発現させると、細胞外への輸送が飛躍的に増強されることを見出した。今後、MMP-7がどのようにマトリプターゼ前駆体から活性を誘導するのかについて調べて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当研究室はスタッフ1名体制であるが、2019年度および2020年度は研究室に大学院生が不在であった上、新型コロナ感染症拡大に伴う大学の入構規制により、学部学生が研究室に入れなかった時期があり、人員不足が研究遅延の主な理由であった。 しかし、2022年度は大学院生が5名に増えたため、遅れを取り戻すとともに、新たな研究の展開が見えてきた。こららのことから、当初の計画以上に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はマトリプターゼ前駆体の細胞外輸送がそのセリンプロテアーゼドメインの活性型コンフォーメーション誘導に依存するという興味深い知見を得た。今後は細胞外輸送に関わるセリンプロテアーゼドメイン内のアミノ酸残基の同定を試みるとともに、トランスポーターの同定を試みる予定である。 一方、MMP-7活性とマトリプターゼ前駆体の細胞外輸送、およびそれに続くマトリプターゼ前駆体の活性化については不明点が多く、現時点でマトリプターゼ前駆体が直接MMP-7によって切断を受け、活性化されるわけではないこと以外明らかになっていない。想定される機序としてMMP-7により切断を受けた分子がエンドサイトーシスにより、取り込まれ、マトリプターゼ前駆体の細胞外輸送に関与することであるが、今後はその機序について検証していく予定である。
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