老化脳に蓄積する脳障害性希少糖が認知症に及ぼす影響の解明と認知症予防戦略の構築

• 研究課題/領域番号: 19K07066
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
• 研究機関: 静岡県立大学
• 研究代表者: 南 彰 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (80438192)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2022年度)
• 配分額: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円); 2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円); 2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円); 2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円); 2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
• キーワード: シアル酸 / シアリダーゼ / 認知症 / 老化 / 食品 / 記憶 / ラット / 脳 / 認知機能

研究開始時の研究の概要

シアル酸の脳希少糖分子であるN-グリコリルノイラミン酸（Neu5Gc）は、脳において合成酵素が発現していないため、脳でNeu5Gcを作り出すことはできない。研究代表者はNeu5Gcのラット体内動態を分析したところ、末梢から脳へNeu5Gcが移行することが見出された。糖鎖からシアル酸を外す酵素（シアリダーゼ）は記憶形成に不可欠であるが、Neu5Gcはこのシアリダーゼの働きを阻害する。このことから、脳に移行するNeu5Gcは認知機能に影響することが推定される。そこで本研究では、Neu5Gcの脳内蓄積と認知症に及ぼす影響を解明する。

研究成果の概要

すべての哺乳動物の脳において、非ヒト型シアル酸分子種（Neu5Gc）は生合成されることはない。研究代表者はNeu5Gcのラット体内動態を分析したところ、末梢から脳へNeu5Gcが移行することを見出した（Taguchi et al., 2015）。糖鎖からシアル酸を外す酵素（シアリダーゼ）は記憶形成に不可欠であるが、Neu5Gcはこのシアリダーゼの働きを競合的に阻害する。このことから、脳に移行するNeu5Gcは認知機能に影響することが推定された。本研究において、記憶におけるNeu5Gcの機能を検討したところ、Neu5Gcは海馬依存性の記憶やシナプス可塑性に重要な役割を担うことが明らかとなった。

研究成果の学術的意義や社会的意義

超高齢社会を迎えた本邦において、認知症の予防や改善策の構築は喫緊の課題である。近年のアミロイドを標的とした認知症治療薬の治験から、認知症対策には早期からの予防が効果的であることが分かってきた。本研究により、Neu5Gcはシナプス可塑性を減弱し、認知機能を低下させることが見出された。脳におけるNeu5Gcの蓄積を防止することにより、認知機能の改善に繋げることができると期待される。

研究成果

• [雑誌論文] Live Imaging of Virus-Infected Cells by Using a Sialidase Fluorogenic Probe (2021)
  • 著者名/発表者名: Takahashi Tadanobu、Kurebayashi Yuuki、Otsubo Tadamune、Ikeda Kiyoshi、Minami Akira、Suzuki Takashi
  • 雑誌名: Methods in Molecular Biology 巻: 2274 ページ: 141-154
  • DOI: 10.1007/978-1-0716-1258-3_13
  • ISBN: 9781071612576, 9781071612583
• [雑誌論文] The Function of Sialidase Revealed by Sialidase Activity Imaging Probe (2021)
  • 著者名/発表者名: Minami Akira、Kurebayashi Yuuki、Takahashi Tadanobu、Otsubo Tadamune、Ikeda Kiyoshi、Suzuki Takashi
  • 雑誌名: International Journal of Molecular Sciences 巻: 22 号: 6 ページ: 3187-3187
  • DOI: 10.3390/ijms22063187
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Enhancement of elastin expression by transdermal administration of sialidase isozyme Neu2. (2021)
  • 著者名/発表者名: Akira Minami, Yuka Fujita, Jun Goto, Ayano Iuchi, Kosei Fujita, Yasuyo Mikami, Mako Shiratori, Ami Ishii, Samir Mitragotri, Yasunori Iwao, Hiroaki Kanazawa, Yuuki Kurebayashi, Tadanobu Takahashi, Tadamune Otsubo, Kiyoshi Ikeda, Takashi Suzuki.
  • 雑誌名: Sci. Rep. 巻: 11 号: 1 ページ: 3302-3302
  • DOI: 10.1038/s41598-021-82820-1
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The antiviral effect of catechins on mumps virus infection (2021)
  • 著者名/発表者名: Takahashi Tadanobu、Kurebayashi Yuuki、Tani Kazumasa、Yamazaki Mika、Minami Akira、Takeuchi Hideyuki
  • 雑誌名: Journal of Functional Foods 巻: 87 ページ: 104817-104817
  • DOI: 10.1016/j.jff.2021.104817
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Human parainfluenza virus type 1 regulates cholesterol biosynthesis and establishes quiescent infection in human airway cells (2021)
  • 著者名/発表者名: Kurebayashi Yuki、Bajimaya Shringkhala、Watanabe Masahiro、Lim Nicholas、Lutz Michael、Dunagan Megan、Takimoto Toru
  • 雑誌名: PLOS Pathogens 巻: 17 号: 9 ページ: e1009908-e1009908
  • DOI: 10.1371/journal.ppat.1009908
• [雑誌論文] Detection and Isolation of a Drug-Resistant Influenza Virus Using a Sialidase Fluorescence Imaging Technique (2020)
  • 著者名/発表者名: Kurebayashi Yuuki、Takahashi Tadanobu、Otsubo Tadamune、Minami Akira、Ikeda Kiyoshi、Suzuki Takashi
  • 雑誌名: Ｔｒｅｎｄｓ ｉｎ Ｇｌｙｃｏｓｃｉｅｎｃｅ ａｎｄ Ｇｌｙｃｏｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ 巻: 32 号: 186 ページ: E37-E43
  • DOI: 10.4052/tigg.1806.1E
  • NAID: 130007815513
  • ISSN: 0915-7352, 1883-2113
  • 年月日: 2020-03-25
  • 査読あり
• [雑誌論文] Mitigation of Memory Impairment in Ovariectomized Rats Using Garlic Powder Treated with Subcritical Water (2020)
  • 著者名/発表者名: Minami Akira、Mikami Yasuyo、Kano Takahiro、Matsushita Hiroshi、Fujita Yuka、Yoshimura Marina、Abe Yuki、Watanabe Hiromi、Hara Masaomi、Kurebayashi Yuki、Takahashi Tadanobu、Kanazawa Hiroaki、Wakatsuki Akihiko、Suzuki Takashi
  • 雑誌名: Ｂｉｏｌｏｇｉｃａｌ ＆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃａｌ Ｂｕｌｌｅｔｉｎ 巻: 43 号: 3 ページ: 546-549
  • DOI: 10.1248/bpb.b19-00311
  • NAID: 130007804427
  • ISSN: 0918-6158, 1347-5215
  • 年月日: 2020-03-01
  • 査読あり
• [雑誌論文] The sialidase inhibitor 2,3-dehydro-2-deoxy-N-acetylneuraminic acid is a glucose-dependent potentiator of insulin secretion (2020)
  • 著者名/発表者名: Minami Akira、Fujita Yuka、Shimba Sumika、Shiratori Mako、Kaneko Yukiko K.、Sawatani Toshiaki、Otsubo Tadamune、Ikeda Kiyoshi、Kanazawa Hiroaki、Mikami Yasuyo、Sekita Risa、Kurebayashi Yuuki、Takahashi Tadanobu、Miyagi Taeko、Ishikawa Tomohisa、Suzuki Takashi
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 10 号: 1 ページ: 5198-5198
  • DOI: 10.1038/s41598-020-62203-8
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Dietary sesame diminishes bone mass and bone formation indices in ovariectomized rats (2020)
  • 著者名/発表者名: R. Tachibana;H. Matsushita;Minami A;N. Morita;S. Shimizu;H. Kanazawa;T. Suzuki;K. Watanabe;A. Wakatsuki
  • 雑誌名: Clinical and Experimental Obstetrics & Gynecology 巻: 47 号: 4 ページ: 546-546
  • DOI: 10.31083/j.ceog.2020.04.5144
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effect of the methanol extract of the Lion's Mane mushroom, Hericium erinaceus, on bone metabolism in ovariectomized rats (2020)
  • 著者名/発表者名: N. Morita, H. Matsushita, Minami A, S. Shimizu, R. Tachibana, H. Kanazawa, T. Suzuki, K. Watanabe, A. Wakatsuki
  • 雑誌名: Clinical and Experimental Obstetrics & Gynecology 巻: 47 号: 1 ページ: 47-47
  • DOI: 10.31083/j.ceog.2020.01.4987
  • 査読あり
• [学会発表] 食餌に由来する神経障害性のあるシアル酸分子種の体内動態の分析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 勝又千裕、南 彰、田口理紗、後藤純、金澤寛明、鈴木隆、竹内英之
  • 学会等名: 第85回日本生化学会中部支部例会・シンポジウム
• [学会発表] 静岡産機能性食品を活用した地域健康長寿産業の活性化と人材育成 (2021)
  • 著者名/発表者名: 南 彰、松下宏、金澤寛明、鈴木 隆
  • 学会等名: USフォーラム2021
• [学会発表] 学部間協定締結を志向したタイ産機能性食品の共同開発 (2021)
  • 著者名/発表者名: 南 彰、Sureelak Rodtong、Pongpun Siripong、Jantana Yahuafai、鈴木 隆
  • 学会等名: USフォーラム2021
• [学会発表] 脳希少糖を取り込んだ糖脂質が認知症に及ぼす影響の解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 荻野加奈子、南彰、中尾初音、平林義雄、鈴木隆、竹内英之
  • 学会等名: 第36回SAM学会学術大会
• [学会発表] 認知症発症リスク因子となるシアル酸分子種の脳内移行性の解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 勝又千裕、南 彰、紅林佑希、高橋忠伸、鈴木隆、竹内英之
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2021
• [学会発表] ラット脳におけるシアリダーゼアイソザイムNeu2の発現分布と機能解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 井内彩乃、南 彰、金澤寛明、紅林佑希、高橋忠伸、鈴木隆、竹内英之
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2021（オンライン開催）
• [学会発表] Accumulation of neuropathic sialic acid species in the brain with aging. (2021)
  • 著者名/発表者名: Azliza Mad Anuar, Akira Minami, Yuki Abe, Yuuki Kurebayashi, Tadanobu Takahashi, Takashi Suzuki, Hideyuki Takeuchi
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2021
• [学会発表] 糖鎖科学を基盤とした食品成分による更年期の認知機能低下に対する改善作用 (2021)
  • 著者名/発表者名: 安部由記、南 彰、紅林佑希、高橋忠伸、鈴木隆、竹内英之
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2021
• [学会発表] 更年期神経症状を改善する機能性食品を活用した健康長寿産業の育成 (2020)
  • 著者名/発表者名: 南彰、鈴木 隆、金澤寛明、松下 宏
  • 学会等名: USフォーラム2020
• [学会発表] 低血糖副作用を回避する糖尿病治療薬の開発 (2020)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 隆、高橋忠伸、南 彰、紅林佑希、金澤 寛明、石川智久、金子雪子、池田 潔、大坪忠宗
  • 学会等名: USフォーラム2020
• [学会発表] 部局間協定締結を志向したタイ産機能性食品の共同開発 (2020)
  • 著者名/発表者名: 南 彰、鈴木 隆、Sureelak Rodtong、Pongpun Siripong、Jantana Yahuafai
  • 学会等名: USフォーラム2020
• [学会発表] 皮膚におけるシアリダーゼの発現分布と作用 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤田優香、南 彰、井内彩乃、岩尾康範、金澤寛明、大坪忠宗、池田 潔、鈴木 隆
  • 学会等名: 第35回老化促進モデルマウス（SAM）学会学術大会
• [学会発表] 低血糖副作用を回避する新規糖尿病治療薬の開発 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤田優香、南彰、金子雪子、澤谷俊明、大坪忠宗、池田潔、宮城妙子、紅林佑希、高橋忠伸、石川智久、鈴木隆
  • 学会等名: 第19回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム
• [学会発表] シアリダーゼの局在を可視化する新規蛍光イメージング剤の開発 (2020)
  • 著者名/発表者名: 紅林佑希、高橋忠伸、南 彰、大坪忠宗、池田 潔、鈴木 隆
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・ 日本薬学会東海支部合同学術大会2019
• [学会発表] グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する新規糖尿病治療薬の開発 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤田優香、南彰、金子雪子、澤谷俊明、大坪忠宗、池田潔、紅林佑希、高橋忠伸、石川智久、鈴木隆
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・ 日本薬学会東海支部合同学術大会2019
• [学会発表] 皮膚におけるシアリダーゼの発現分布と役割 (2020)
  • 著者名/発表者名: 藤田優香、南彰、井内彩乃、高橋忠伸、紅林佑希、大坪忠宗、池田潔、鈴木隆
  • 学会等名: 第39回日本糖質学会年会
• [産業財産権] エラスチン産生促進剤及び皮膚化粧料 (2021)
  • 発明者名: 南 彰、岩尾康範、鈴木隆
  • 権利者名: 南 彰、岩尾康範、鈴木隆
  • 産業財産権種類: 特許
  • 出願年月日: 2021
  • 外国
• [産業財産権] エラスチン産生促進剤及び皮膚化粧料 (2020)
  • 発明者名: 南 彰、鈴木 隆、岩尾康範
  • 権利者名: 静岡県公立大学法人
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 2020-090313
  • 出願年月日: 2020