研究課題
基盤研究(C)
体内の細菌の侵入を察知した好中球は、細胞膜とアクチン骨格をダイナミックに再構成し、形態を変化させて殺菌行動に備える。次いで貪食するか、細胞外に放出したクロマチン網で細菌を捕らえ殺菌する。我々は、好中球の機能低下を示すダイナミンの疾患変異解析から、好中球のアクチン再構成に必須な機構(ダイナミンクロスブリッジ)を発見した。ダイナミンは、細胞膜とアクチン再構成を協奏的に制御し殺菌に寄与する可能性が高い。本研究は、「細胞外トラップ」と貪食において、ダイナミンにより膜とアクチン再構成がどのように制御されるのかを明らかにし、好中球殺菌機構の全貌にせまる。
好中球は自然免疫において侵入した細菌を破壊する重要な役割を担う。この過程でアクチン骨格の再構成を伴う細胞膜の形態変化をおこす。我々はダイナミン2のCharcot-Marie-Tooth病変異体K562Eの発現によりストレスファイバーが異常となることを見出し、この変異体のアクチンへの影響をin vitroで解析した。ダイナミン2K562Eは自己重合能と膜結合能が著しく低下していた。この変異ダイナミンはアクチン線維を直接束化したが、形成されたアクチン線維束の膜結合能は顕著に減少していた。以上よりダイナミンはアクチン線維を束化し細胞膜とリンクさせることで細胞内のアクチン骨格を制御していると結論した。
好中球は細胞膜とアクチン骨格をダイナミックに再構成し、形態を変化させて体内に侵入した細菌の殺菌行動に備える。次いで貪食するか、細胞外に放出したクロマチン網で細菌を捕らえ殺菌する。このクロマチン網は、細胞外トラップと呼ばれ、強力な殺菌手段である。最近、細胞外トラップが自己免疫疾患、がん転移、血栓の過形成への関与が報告され、その形成制御が課題である。本研究は、好中球の貪食及び細胞外トラップ形成に関わる細胞膜とアクチン骨格の再構成機構を解析する研究である。得られる知見は、好中球の殺菌機構の解明のみならず、近年明らかになった好中球細胞トラップ由来の数々の炎症の治療戦略に大きく寄与すると考えられる。
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