研究課題
基盤研究(C)
脊髄小脳失調症(SCA)進行性の小脳失調及び小脳の萎縮を共通の症状とする常染色体優性遺伝性の神経変性疾患である。私は数種類のSCA原因タンパク質を初代培養小脳プルキンエ細胞に発現させると、樹状突起の発達低下を引き起こすことを解明し、SCAに共通の表現型の一つではないかと想定した。様々なSCA原因タンパク質を発現する培養小脳プルキンエ細胞をin vitro SCAモデル細胞、様々なSCA原因タンパク質を発現し、運動機能障害を示すマウスをin vivo SCAモデルマウスとし、この両者に治療効果を示す化合物を探索することにより、様々なSCAに共通に有効な治療薬の探索を試みる。
様々な原因遺伝子で発症する神経変性疾患である脊髄小脳変性症(SCA)に対し、共通に有効な治療薬・予防薬候補化合物の探索を行った。その結果、小脳選択的に硫化水素産生を誘導するD-cysteineが複数のSCA原因タンパク質を発現させた初代培養小脳プルキンエ細胞における樹状突起形態異常を共通に改善すること、及びD-cysteineの慢性投与がSCA1モデルマウスにおける運動障害発症を遅らせることを明らかにした。以上の結果から、安全性の高いD-cysteineはSCA共通の発症予防薬として有用である可能性が示された。
SCAは常染色体優性性の神経変性疾患であり、患者の子供は1/2の確率でSCA原因遺伝子を保有する。しかしながら、SCAの有効な治療法・発症予防法は存在せず、患者の子供は発症しないことを願うことしかできないのが現状である。D-Cysteineは安全性の高いアミノ酸であるため、SCA原因遺伝子保有者が発症前からD-cysteineを慢性的に服用することで、SCAの発症を予防できる可能性が考えられ、社会的意義も大きい。また、D-cysteineは世界初の神経変性疾患予防薬となることも期待でき、学術的意義も大きい。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 2件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (46件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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