研究課題/領域番号 |
19K07180
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
|
研究分担者 |
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30454474)
芝田 信人 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60319449)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | タクロリムス / 母集団薬物動態解析 / 造血幹細胞移植 / 超臨界抽出-クロマトグラフィー/質量分析システム / 血中濃度 / TDM / 赤血球移行 / 治療薬物モニタリング / 免疫抑制剤 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫抑制剤タクロリムス(TAC)は赤血球中に通常約95%が存在し、赤血球中のTACは血管外へ移行することができない。そのためTACの全血液中濃度は同じ濃度であっても赤血球分画の量的変動を考慮しなければ、誤った結論を導くこととなる。造血幹細胞移植では、その前処置の骨髄破壊により赤血球数が大きく減少し、さらに移植後に赤血球輸血をしばしば受けるため患者の赤血球数は大きく変動する。本研究は、全血液中・血漿中・血漿中遊離型濃度を組み込んだTACの生理学的薬物動態モデルを構築し、TACの薬効・有害事象との関連解析から、現行の全血中濃度の再評価・補正による投与設計の改善に貢献するものである。
|
研究実績の概要 |
前年度報告したタクロリムス(TAC)を使用した造血幹細胞移植(HSCT)患者91名の全血中濃度データを用いた母集団薬物動態解析結果を学術誌に投稿中である。 また、本研究の骨子であるTACの血球移行率変動が、糖尿病病態時の中枢毒性(中枢移行率)に関連する可能性があると考え、糖尿病モデル動物における血球移行率および脳内移行率を検討したところ、短期的な検討という制限があるが、仮説とは異なり、TAC血球移行率(blood to plasma ratio; BPR)に変動はなく、従来報告のあるような糖尿病時の赤血球膜の糖化変性による赤血球移行率変動・中枢移行に糖尿病は影響がないとの結果を得た。本検討結果は第11回日本くすりと糖尿病学会学術集会(2023.9神戸)において発表し、優秀演題賞を受賞した。 TAC血球移行率(blood to plasma ratio; BPR)のin vitroからin vivoへの外挿に関しては、ラットを用いての概念検証実験に関する結果の頑健性を確認するとともに、in vitro においてHtを0.1~0.8まで変動させた場合のBPRを測定したところ、全血中濃度はHt値が変化しても一定で、Ht値が増加するほど血漿中濃度は低下し、BPRは上昇した。以上の結果は構築したBPR予測モデルを概ね良好に捕捉した。(未発表) また本モデルの有用性を確たるものとするため、我々のデータを用い、in vitroからin vivoへの外挿性を、公表されている既存のモデルで比較・評価した結果、赤血球数が変動した場合でも本モデルのin vitroからin vivoへの外挿性が良好であることが示唆された。本検討結果は日本薬学会第144年会(2024.4横浜)において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き、新型コロナウイルスによる影響を受け、進展が遅れ、結果の頑健性を確認する意味でも、期間延長を申請した次第である。 “(Step 1) 超臨界流体質量分析法(超臨界MS/MS)による全血中・血漿中・血漿中遊離型TAC濃度測定法の確立“に関しては、順調に進展している。血漿中遊離型濃度測定は未だ取り組むには至っていない。“(Step 2) 赤血球分画を含むTAC生理学的薬物動態モデルの構築 (Step 2-2:概念検証) (Step 2-3:ヒトへの外挿)”に関して、ラットのおけるin vitroでのモデルの構築に関してはパラメータの推定に成功し、さらにin vivoにおける検証と、in vitroでのパラメータのin vivoへの外挿を行い、結果の頑健性を検証している。ヒト血液を用いた同様の実験に関しては実施していない。“(Step 3) TAC生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿”に関しては、現在91名の造血幹細胞移植患者のデータを用いての母集団薬物動態解析では、先行研究(J Clin Pharm Ther. 2021 Feb;46(1):190-197)と同様に赤血球数が主たる全血中濃度に対する共変量であることを証明し、さらにデータの検証と討論を重ねて、引き続き学術誌へ投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
超臨界流体質量分析法によるTAC超高感度分析法の更なる感度・信頼性向上を行うとともに、以下の計画を実行する。 赤血球分画を含む生理学的薬物動態モデルの構築:臨床における血漿中・血漿中遊離型タクロリムス濃度は入手不能であるため、それを推定する手法が必要となる。概略としては、基礎実験で概念を実証しヒトに外挿するものである。in vitro実験:ラット全血試料を用いて任意のHt値を持つ擬似血液を作製し、BPR予測モデルをもとに、今年度は正常およびさらに詳細にヘマトクリット(Ht)値を変動させ、さらに低濃度域でのin vitro実験を行った。前年度はin vivoへの外挿が可能であることをある程度示したが、本検討を踏まえ、さらにモデルラットにTACを投与し、Ht値および全血中・血漿中さらには血漿中遊離型TAC濃度を実測し、外挿性を検討する予定である ヒト全血試料で同様のin vitro実験を行い、生理学的薬物動態モデルのパラメータを算出し、ヒトにおける当該モデルを構築する。 生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿:造血幹細胞移植患者において、Step 2で構築したヒトにおけるTAC生理学的薬物動態モデルを用い、非線形混合効果モデルによる母集団薬物動態解析法によるパラメータの推定および血漿中遊離型TAC濃度の推定を行う。推定された血漿中遊離型TAC濃度と、移植の成否および有害事象・GVHD発症の有無等のTACの薬理効果をlogistic 解析等にて行い、血漿中遊離型TACとして有効濃度域の再考ならびに全血中濃度としての補正方法を提案し、血漿中・赤血球分画中分布も考慮した全血中TAC濃度モニタリングによる投与設計を可能とする。
|