研究課題
基盤研究(C)
初期腹壁の体腔上皮は腹壁の拡大に先立ち、上皮間葉転換を起こし、その後再び間葉上皮転換を起こす。Six4/Six5二重欠損マウスではこの上皮間葉転換が阻害され、そのことが腹壁形成異常に繋がると考えられた。そこで、本研究課題の「問い」は、1. 腹壁の前駆構造である側板中胚葉から、どのようなシグナルや転写因子の制御機構によって、どのような細胞が増殖、分化、移動を経て腹壁形成という形態形成がなされるのか、また、腹側閉鎖の最終段階としての臍輪の閉鎖がいかなる細胞機序によるのか、2. 体腔上皮の上皮間葉転換及びその後の間葉上皮転換がSIX4およびSIX5のいかなる作用によって制御されるのか、である。
本研究計画は腹壁形成に異常が生じるSix4/Six5 二重欠損マウスと野生型マウスを用いて、腹壁形成の細胞機序を明らかにすることを目的とする。本年度は下記の実験を行い、研究計画を終了した。1. 初期腹壁における体腔上皮細胞及び間葉細胞の標識とタイムラプス観察全胚培養マウスの体腔中に蛍光色素(CSFE)を注入し、体腔上皮細胞を標識した。培養1日後に標識した胚の初期腹壁の切片を作製し、蛍光顕微鏡観察したところ、標識された上皮細胞の一部が間葉に移動していた。体腔上皮細胞を標識する方法が確立できたので、今後、タイムラプス観察を行い、体腔上皮細胞の上皮間葉転換の様相、陥入した間葉細胞の移動速度や移動経路を、野生型とSix4/Six5 二重欠損マウス胚で比較解析する。2. 腹壁における細胞系譜の分子遺伝学的手法による追跡初期腹壁の体腔上皮細胞に早期から発現するWnt2b遺伝子下流にCreERT2遺伝子を発現するマウスを筑波大学と共同で構築した。本マウスをLacZ発現レポーターマウスと交配し、Tamoxifen投与2日後に胚のX-gal染色を行った。内在性のWnt2b遺伝子の発現部位にLacZの発現を認めた。これらのマウスとSix4/Six5 二重欠損マウスとを交配したうえ、腹壁細胞の細胞移動や形態を野生型マウス胚の細胞と比較観察中である。
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