研究課題
基盤研究(C)
毛細血管は内皮細胞からなる管腔の外周を基底膜が裏打ちするシンプルな構造であり、物質交換の場として機能する。とりわけ、物質交換が盛んな内分泌器官などに分布する有窓型毛細血管の壁には“窓”が存在し、物質の移動路として働く。また、基底膜は多様な細胞外マトリクス分子からなり、その分子構成は血管型ごとで異なることから、基底膜を構成する分子が窓の形成に関わることが予想される。本課題では、内分泌器官の中枢である下垂体に焦点を当て、そこに分布する有窓型毛細血管に特徴的に発現する細胞外マトリクス分子に着目し、窓の形成における役割とその調節機序を明らかにする。
物質交換が盛んな内分泌器官や小腸などの組織には、血管壁に窓が開口する有窓型毛細血管が分布している。ホルモンや栄養素などの移動路として機能する窓は直径約70 nm程度のトンネル構造であり、集まることで篩板を形成している。本研究課題では、はじめにラット下垂体前葉の有窓型内皮細胞新規培養法を確立した。次に、フィブロネクチンがインテグリンα5β1を介して微小管を制御し、窓を覆う隔膜の構成タンパク質PLVAPの細胞内輸送を調節していることを明らかにした。さらに、アクチン系に着目した研究を展開することで、ダイナミンとアクチンが協調的に機能し、窓の形成を抑制的に調節していることを見出した。
有窓型毛細血管は下垂体や小腸といった正常組織のほか、がん組織にも分布することが知られる。本課題の遂行で得た研究成果は、毛細血管の有窓性調節における細胞外マトリックスやエンドサイトーシス調節分子との関係性および重要性を示す新知見であるとともに、今後これらの分子に着目した研究をさらに発展させることで、有窓性調節の分子機序の全貌解明のみならず、新しいがん治療戦略への応用も展望できる可能性を秘めている。
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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