研究課題
基盤研究(C)
(1)テトラヒドロビオプテリン(BH4)の欠損で生じるPriapism(持続勃起症)のメカニズムを明らかにする。(2)BH4を介して、自律神経系と一酸化窒素(NO)産生系のあいだにどのような相互調節がはたらいているのかを明らかにする。(3)BH4によって、どのようなメカニズムで神経終末のチロシン水酸化酵素(TH)タンパク質量が制御されるのかを明らかにする。
セピアプテリン還元酵素(SPR)の遺伝子ノックアウト(Spr-/-)マウスは重篤な持続勃起症(Priapism)を発症する。PriapismのあるSpr-/-マウスのペニスホモジネート中の総ビオプテリン、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、ノルアドレナリン、およびチロシン水酸化酵素(TH)のたんぱく質量は野生型に比べ有意に低下し、cGMPが蓄積していた。症状はBH4の反復投与で緩解し、総ビオプテリン、BH4、ノルアドレナリンが増加した。THは増加傾向を示し、一酸化窒素(NO)代謝物量は減少した。Spr-/-マウスのPriapismは交感神経系の機能低下とNO/cGMPシグナル系の亢進による。
Spr-/-マウスで交感神経機能が低下する一方NO/cGMP系が亢進することは、BH4を通じて自律神経系とNO合成系の間に巧妙な調節が働くことを示唆する。BH4の反復投与でPriapismの緩解まで時間を要するのは、THたんぱく質量の増加だけでなくシナプスレベルでの変化が生じるためかもしれない。Priapismはヒトでは鎌状赤血球症の男性患者の約40%に合併するほか悪性腫瘍、脊髄損傷、向精神薬の副作用などで生じることがあるが、不明な点が多い。Spr-/-マウスは血流の維持される非虚血性Priapismのモデルであり、勃起不全症(ED)の治療法へのヒントを与える。
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