研究課題/領域番号 |
19K07332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
衣斐 大祐 名城大学, 薬学部, 准教授 (40757514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | セロトニン作動性幻覚薬 / 精神展開薬 / セロトニン5-HT2A受容体 / 外側中隔核 / 視床下部 / GABA / 抗うつ薬 / 難治性うつ病 / うつ病 / 治療抵抗性うつ病 / ケタミン |
研究開始時の研究の概要 |
NMDA受容体拮抗薬のケタミンは、難治性うつ病にも治療効果を示すため米国ではすでに使われ始めている。一方、Psilocybinなどセロトニン5-HT2A受容体(以下、5-HT2A)刺激薬も即効性と持続性を有する抗うつ作用を示すことが報告された(Kyzar et al, Trends Pharmacol Sci 2017)。我々は既にケタミンの抗うつ作用が5-HT2Aを介していることを見出している。そこで本研究では、5-HT2Aを介する抗うつ作用に関わる神経回路および抗うつ関連分子を明らかにし、ケタミンの抗うつ作用における5-HT2Aの役割を明らかにすることを本研究の目的とする。
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研究実績の概要 |
最近の臨床研究からセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2A)刺激薬のシロシビンが治療抵抗性うつ病の治療に有用であることが示された。しかし、その詳細なメカニズムは不明である。 これまでに我々は、シロシン(シロシビンの活性代謝物)やDOIなど5-HT2A刺激薬を処置したマウスの抗うつ様行動を評価するために強制水泳試験を行った。その結果、うつ様行動の指標である『無動時間』の短縮が認められたが、5-HT2A拮抗薬ボリナンセリンの前処置により拮抗された。さらに、ストレスに関わる外側中隔核(LS)における5-HT2Aをアデノ随伴ウィルス(AAV)により、ノックダウンしたところ、5-HT2A刺激薬による強制水泳試験における無動時間の短縮が認められた。またLSにおける5-HT2A陽性細胞はGABA作動性神経細胞であることが分かった。 2021年度の本研究では、逆行性神経トレーサーを用いて、LSの5-HT2A陽性GABA神経調べたところ、視床下部に神経投射していることが明らかとなった。すなわち、5-HT2A刺激薬はLSから視床下部に投射しているGABA作動性神経上の5-HT2Aを刺激することでGABA神経を活性化し、それが抗うつ作用に関わることが予想された。 マウスをより大きなマウスのいるケージで共存させることにより,社会的回避(引きこもり)や快感消失などの抑うつ関連行動を起こさせるストレスのことを「社会性敗北ストレス」という。そこで本研究では社会敗北ストレスを曝露させたマウスにシロシンを処置すると社会的回避行動がコントロールレベルまで抑制された。以上から、5-HT2A刺激薬のうつ様モデルマウスにおける異常行動を緩解させることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も2020年度と同様に新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、一時的に大学への入構に制限がかかる時期があり、マウスに慢性的に薬物を処置するような実験は一部中止となるなど、研究活動を満足に行えなかった。さらに物品の輸出入にも一部影響がみられ、海外からの試薬等の搬入が大幅に遅れるなどが続き、実験遂行は厳しいときもあったが、幸いにも進捗は「やや遅れている」程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は抗うつ行動におけるLSの神経活性の役割を明らかにするために、光遺伝学および化学遺伝学技術を用いてLSの5-HT2A陽性GABA神経の神経活性を人工的に活性化または抑制した際の抗うつ行動についてマウスを用いて調べる。さらに、5-HT2A刺激薬がLSのGABA神経の遺伝子発現に与える影響を調べるためにRNA-seq法を用いて、5-HT2A刺激薬処置後のLSにおける遺伝子発現を網羅的に解析する。
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