研究課題
基盤研究(C)
臓器および個体サイズの制御は、生物の発生および恒常性維持に不可欠であり、サイズ制御の破綻はがんなどの疾患の発症に直結する。これまで研究代表者はメダカ変異体の解析から、YAPがアクチン重合を適切に制御し、細胞張力を正常に保つことで立体的な臓器構築を司ることを見出した。そこで本研究では、小型魚類を用いて臓器サイズを規定するアクチン重合制御因子を同定するとともに、YAPによるアクチン重合のターンオーバーの制御メカニズムを精査し、YAP-アクチンシグナルによる臓器・個体サイズの制御メカニズムを解明することを最終目標とする。
(1) 臓器構築過程でのYAPメカノホメオスターシスの理解のために、組織の力学特性を直接計測する系の立ち上げを試みた。メダカYAP変異体胚へ磁性流体の油滴を微量注入し、磁場を加えて変形させることで細胞組織の内部に力を加え、その応答を観察することで生体組織内部での硬さを計測する系が樹立できた。(2) 成魚において組織の力学特性を長期にわたり計測する系の確立を試みた。ゼブラフィッシュ成魚の尾ヒレ再生系を用いて、長期タイムラプスイメージングを行うための麻酔液還流システムを樹立し、ヒレ組織に磁性流体の油滴を注入し磁場をかけてその変形を計測することで、生体組織における力学特性(粘弾性)の実測に成功した。
現在、力学恒常性の観点からの病因解明・治療法開発は遅れており、本研究成果を通して得られる力学恒常性の作動原理の理解は、組織の硬さというこれまでとは視点の異なる新しい標的を狙ったがん治療法にも応用できるという意義がある。がんの成立過程においては、粘弾性の他にも圧力や張力などさまざまな生体組織の力学特性を把握することが不可欠であり、組織の時空間的な力学特性の経時的計測技術を確立することも今後の必須の課題であると考える。
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