研究課題
基盤研究(C)
細胞小器官の一つであるペルオキシソームの形成障害は大脳皮質の層構造破綻や炎症惹起など脳中枢神経系障害を導くが、その病態発症機構は明らかとなっていない。申請者は神経細胞遊走障害および炎症惹起の病態発症機構解明を目的とし、ペルオキシソーム形成異常症モデルマウスであるPex14ノックアウトマウスを用いて解析を行う。神経細胞遊走の解析には子宮内エレクトロポレーションを用い、炎症惹起に関しては炎症性サイトカインや脂質メディエーターを解析対象として研究を進める。
ペルオキシソーム形成異常症は脳中枢神経系において重度の障害を呈する。我々はこれまでにペルオキシソーム形成異常症モデルマウスを用いた解析から、小脳の脳由来神経栄養因子(BDNF)およびその受容体・TrkB-T1の発現異常が原因であることを見出している。ペルオキシソーム欠損グリア細胞の実験から、BDNFの発現異常はサイトゾルに誤局在したカタラーゼによるサイトゾルの還元化が原因であることを突き止めた。さらに、薬剤誘導性ペルオキシソーム欠損マウスを用いた解析から、生体マウスにおいてペルオキシソーム欠損を誘導すると記憶障害を呈することが明らかとなった。
ペルオキシソーム形成異常症に関して、我々はBDNF-TrkBシグナル伝達系異常を介した小脳形態障害の分子機構を世界で初めて解明してきた。本研究成果は、ペルオキシソーム欠損により誘発される細胞質還元化が及ぼすBDNF発現異常を明らかにし、未解明であったペルオキシソーム形成異常症の病態発症機構において、代謝障害を起因とする中枢神経系障害の分子機構を明らかにした重要な知見である。さらに、ペルオキシソーム機能が成体マウス海馬における記憶形成に必須であることを示し、成体脳における新たなペルオキシソーム機能を明らかにした重要な知見である。
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