研究課題
基盤研究(C)
下垂体は生体の内分泌機能をコントロールする臓器です。機能不全には不足ホルモンの補充が必要ですが、身体の状態に合わせて瞬時にホルモン量を調節することは、薬として投与するだけでは困難を極めます。体の変化を感知して機能する内分泌細胞の再生医療実現に向けて、ヒトiPS細胞から下垂体三次元培養を行っています。本研究では、電子顕微鏡を用いた超微形態学的検討や免疫電顕によるタンパク発現解析を加えて、再生医療を形態学の立場から支えることを目標としています。外科的に切除された下垂体腫瘍や周囲非腫瘍性下垂体組織の病理学的特徴を研究の参考にするとともに、研究成果を下垂体腫瘍のホルモン機能制御につなげます。
iPS細胞由来下垂体3次元培養細胞集塊において、電顕等を用いた病理形態学的検討の立場から、複数の検討にかかわることができ、論文発表に至ることができた(2つはin pressの状態)。いずれの論文においても、電顕を用いて、培養細胞が分泌顆粒を持つことを証明した。また、免疫電顕の技術を用いて、細胞内分泌顆粒に、ACTH、GH、PRLを金コロイド粒子の存在から証明することができた。さらに、2重免疫電顕を用いて、隣り合う培養細胞が異なるホルモンを産生していることも示した。また、同様の技術を用いて、その知識、検討の基礎となる臨床検体を用いた形態学的検討を行った。下垂体前葉細胞由来神経内分泌細胞腫瘍の臨床病理学的診断の経験から、転写因子を用いた腫瘍細胞の分化方向の特定、分類を行ってきた。そのうち約1,000例の腫瘍の中から、Null cell adenomaという、特定の分化方向を示さない腫瘍、すなわち下垂体神経内分泌腫瘍にかかわると考えられる転写因子すべてに陰性の腫瘍を6例抽出し、以前発表していた。これらに電顕を用いた形態学的特徴に依存した分類、およびWHO分類で規定された新たな転写因子の導入、免疫染色というやや不安定な技術に対する懸念からの再染色、再検討を行い、いずれも、既存の分化方向に属することを明示できた。このことから、下垂体神経内分泌腫瘍の由来となる細胞に、新たな候補(未知のホルモンを産生する細胞など)が、おそらくないであろうことも示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
勤務先の移動に伴い1年ほどの遅れをとったが、昨年度は研究環境の整備ができ、現在はおおむね順調に遂行することができている。
由来とする神経内分泌細胞細胞をホルモン産生性を電顕を用いた形態学的な評価から分類することが十分である、ということを用いて、さらに培養細胞における形態学的評価方法を一般化できるようなまとめを、本年度は行い、公表していきたい。
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