研究課題/領域番号 |
19K07513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 雅彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70270486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 肝細胞 / 毛細胆管バリア / 胆汁うっ滞 / 脂肪肝 / タイトジャンクション / ZO-1 / ZO-2 / 肝臓 / 胆汁鬱滞 / 血管内皮 / 上皮組織バリア / 臓器機能 / 栄養代謝 / 炎症老化 / 生体内ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
組織バリアの存在は多細胞生物の正常な生命活動に極めて重要である。本研究では、組織バリアの重要な構成要素である上皮細胞間Tight Junctionに焦点を当て、その形成・維持に必須なZO family分子を組織特異的に欠損するマウスの解析を中心に、特定の臓器においてバリアが破綻した際に各々の臓器の組織構築・生理機能・分子発現がどのように変化するか、特定臓器のバリア破綻が他臓器や全身性にどのような影響を及ぼすか明らかにする。
さらに、栄養やエネルギー代謝および炎症や老化といった現象とバリア制御の関係性について検討し、どのような物質や生活環境因子が組織バリアを障害するのか解明する。
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研究実績の概要 |
ヒト遺伝性疾患において、上皮バリア構造タイトジャンクションの構成分子の変異が原因となる事例の報告が増加している。最近新たに、家族性進行性胆汁うっ滞症4型PFIC4の責任遺伝子がタイトジャンクション構成分子ZO-2であることが明らかにされた。ZO-2はタンパク質複合体形成能を通じて上皮バリア調節に働くが、肝細胞におけるZO-2の欠損が、どのようにして当該疾患の発症と進行につながるのか明らかにはなっていない。この点を解明するため、肝臓特異的にZO-2を欠損するマウスを作製した。 肝臓特異的ZO-2欠損マウスは軽微な胆汁うっ滞を呈したが、PFIC4患者のような重篤な状態には至らなかった。そこで、ZO-2に類似した一次構造を持つ分子ZO-1が機能を代替している可能性を考慮し、ZO-2とZO-1を同時に肝臓特異的に欠損するマウス(L-ZO1/2-DKOマウス)を樹立した。L-ZO1/2-DKOマウスは胆汁うっ滞を呈すると同時に成長障害を示し、6週齢までに全個体が死亡した。また、肝小葉構造が不明瞭になり、毛細胆管構造についても細胞膜上での位置や微絨毛の存在に異常が起きるなど、PFIC4患者肝臓に類似した特徴を示すことが明らかになった。 その一方で、ZO-2のみを肝臓特異的に欠損させたマウスは、8カ月齢ごろより次第に肝臓が肥大化し、12カ月齢ごろには明らかな肝腫大を起こすようになった。したがって、ヒトと時間経過は異なるものの、マウスにおいてもZO-2欠損は肝臓の構造と機能に障害を及ぼすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
L-ZO1/2-DKOマウスの肝臓を詳しく解析したところ、肝細胞索構造と類洞の配列が乱れていた。また、zonationが変化し、E-cadherin陽性のzone1が拡張する一方で、zone3を特徴づけるグルタミン合成酵素陽性細胞が減少していた。L- ZO1/2-DKOマウス肝細胞内では、vacuoleの出現およびミトコンドリアの膨潤といった異常が認められた。また、本来はapicalに存在する毛細胆管の位置が不規則となり、形態にも異常が認められた。分子レベルの解析を行なったところ、タイトジャンクション構成分子の局在異常のみならず、毛細胆管への物質排出に関わるトランスポーターがapical膜へ局在化できないという変化が起きていた。 一方、加齢によって腫大化した肝臓特異的ZO-2欠損マウス肝臓を組織解析した結果、肝細胞内に大きな脂肪滴が蓄積して脂肪肝となっていることが明らかになった。そこで、脂質代謝に変化をきたしている可能性を考え、高脂肪食、高コレステロール食、高胆汁酸食を摂取させ、コントロールマウスとKOマウスで違いの有無を検討した。その結果、高胆汁酸食を摂取させた場合、コントロールマウスと比較してKOマウスの肝臓に脂肪が蓄積しやすくなっていた。この表現系について再現性を確認するなどの解析に時間を要しているため、現在までの進捗状況をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
L-ZO1/2-DKOマウスはPFIC4の病態に類似した表現系を示すことから、L-ZO1/2-DKOマウス肝において生じている分子変化を詳細に解明することによって、PFIC4の発症・進行機構について理解を深めることができると考えている。そのために、肝臓における変化が現れる比較的初期段階にあたる2週齢、症状が進んだ状態の4週齢のマウス肝臓から、RNAおよびタンパク質を抽出し、トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析を実施する。 これにより、タイトジャンクション構成分子の変異が具体的にどのような分子経路にどのような影響を及ぼし、PFIC4のような胆汁うっ滞を引き起こすのか明らかにすると同時に、治療に役立つような知見の獲得を目指す。 また、ZO-2のみを肝臓特異的に欠損させたマウスについて、年齢や食事について複数条件でトランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析を実施する。具体的には、若齢期の2~4ヵ月、肝臓の腫大化が起きる前段階の6~8ヵ月、腫大化が起きた12ヵ月の3段階について解析を行う。食事については、通常食、高コレステロール食、高胆汁酸食および高コレステロール高胆汁酸食の4種類の場合について比較する。得られるデータをIPAなど経路解析によって検討し、ZO-2欠損を端緒として肝臓に生じる変化の分子機序について明らかにしていく。
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