先天性サイトメガロウイルス感染に対する宿主免疫とウイルスの免疫回避機構の解析

• 研究課題/領域番号: 19K07578
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分49060:ウイルス学関連
• 研究機関: 岐阜薬科大学
• 研究代表者: 井上 直樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 客員共同研究員 (90183186)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2021年度)
• 配分額: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円); 2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円); 2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円); 2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
• キーワード: サイトメガロウイルス / 先天性感染 / 免疫回避 / Fcγ受容体 / 抗体依存性貪食 / 細胞死阻害 / 胎盤 / モルモット / 感染防御 / 細胞死 / 動物モデル / 宿主免疫

研究開始時の研究の概要

サイトメガロウイルス(CMV)が妊婦に感染すると難聴や精神発達遅滞などの神経学的障害をもたらすため、ワクチンの開発が求められている。本研究では、妊娠モルモットを先天性感染のモデル動物として用いて、①感染を防ぐことに関与する免疫指標、②胎盤から胎児への感染を防ぐことに必要な胎盤のNK細胞の活性化の機序、③感染に伴う胎盤の遺伝子発現の変化、④CMVが免疫を回避する機序などを明らかにすることで、ワクチン開発の基盤となる免疫学的な理解を深める。

研究成果の概要

先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は出生児の0.2-1%の頻度で起り、感染児の3割程度に神経学的障害などの疾病を起すため、私達は小動物で唯一先天性感染を起すモルモットCMVを用いて、発症機序とワクチン開発に関わる研究を実施した。a) 抗体依存性貪食などの免疫学的指標測定系の確立、b) 免疫回避機能としてモルモットCMVがコードするFcγ受容体ホモログやBAXやBAKによるアポトーシス誘導の阻害に関わる遺伝子産物などの同定と機能解析、3) モルモット胎盤から樹立した栄養膜細胞株への感染に伴うVEGF-AやIL-10発現の変化の同定などを行った。

研究成果の学術的意義や社会的意義

サイトメガロウイルス(CMV)感染症は800人の出生児に1人と高頻度であるが、ワクチンが実用化されていない。障害の発生や感染防御を研究するための先天性CMV感染を起す小動物モデルはモルモットCMVに限られ、私達を含め世界でも数施設でしか扱われていない。本研究は、モルモットCMVを用いて、感染の防御に必要な免疫指標を明確にすること、免疫回避機能の同定とその機能の欠損を利用した弱毒生ワクチン開発の可能性を評価すること、胎盤の感染に伴う障害の発生機序を解明することを意図した研究として社会的意義がある。

研究成果

• [国際共同研究] University of Alabama at Birmingham/CDC/Wayne State University(米国)
• [国際共同研究] University of Bologna(イタリア)
• [雑誌論文] Suppression of human trophoblast syncytialization by human cytomegalovirus infection (2022)
  • 著者名/発表者名: Mimura Nobuko、Nagamatsu Takeshi、Morita Kazuki、Taguchi Ayumi、Toya Takashi、Kumasawa Keiichi、Iriyama Takayuki、Kawana Kei、Inoue Naoki、Fujii Tomoyuki、Osuga Yutaka
  • 雑誌名: Placenta 巻: 117 ページ: 200-208
  • DOI: 10.1016/j.placenta.2021.12.011
  • 査読あり
• [雑誌論文] Characterization of a thiourea derivative that targets viral transactivators of cytomegalovirus and herpes simplex virus type 1 (2021)
  • 著者名/発表者名: Kondo Hiroki、Koshizuka Tetsuo、Majima Ryuichi、Takahashi Keita、Ishioka Ken、Suzutani Tatsuo、Inoue Naoki
  • 雑誌名: Antiviral Research 巻: 196 ページ: 105207-105207
  • DOI: 10.1016/j.antiviral.2021.105207
  • 査読あり
• [雑誌論文] ICTV Virus Taxonomy Profile: Herpesviridae 2021 (2021)
  • 著者名/発表者名: Gatherer D, Depledge DP, Hartley CA, Szpara ML, Vaz PK, Benko; M, Brandt CR, Bryant NA, Dastjerdi A, Doszpoly A, Gompels UA, Inoue N, Jarosinski KW, Kaul R, Lacoste V, Norberg P, Origgi FC, Orton RJ, Pellett PE, Schmid DS, Spatz SJ, Stewart JP, Trimpert J, Waltzek TB, Davison AJ
  • 雑誌名: Journal of General Virology 巻: 102 号: 10 ページ: 001673-001673
  • DOI: 10.1099/jgv.0.001673
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] The Guinea pig cytomegalovirus GP119.1 gene encodes an IgG‐binding glycoprotein that is incorporated into the virion (2021)
  • 著者名/発表者名: Majima Ryuichi、Koshizuka Tetsuo、Inoue Naoki
  • 雑誌名: Microbiology and Immunology 巻: 65 号: 1 ページ: 28-39
  • DOI: 10.1111/1348-0421.12867
  • 査読あり
• [雑誌論文] The Carboxyl-Terminal Penta-Peptide Repeats of Major Royal Jelly Protein 3 Enhance Cell Proliferation (2020)
  • 著者名/発表者名: Minegaki Naho、Koshizuka Tetsuo、Nishina Saeka、Kondo Hiroki、Takahashi Keita、Sugiyama Tsuyoshi、Inoue Naoki
  • 雑誌名: Ｂｉｏｌｏｇｉｃａｌ ＆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃａｌ Ｂｕｌｌｅｔｉｎ 巻: 43 号: 12 ページ: 1911-1916
  • DOI: 10.1248/bpb.b20-00607
  • NAID: 130007948721
  • ISSN: 0918-6158, 1347-5215
  • 年月日: 2020-12-01
  • 査読あり
• [雑誌論文] Identification and functional analyses of a cell-death inhibitor encoded by guinea pig cytomegalovirus gp38.1 in cell culture and in animals (2020)
  • 著者名/発表者名: Noguchi Kazuma、Majima Ryuichi、Takahashi Keita、Iwase Yoshihiko、Yamada Souichi、Satoh Keisuke、Koshizuka Tetsuo、Inoue Naoki
  • 雑誌名: Journal of General Virology 巻: 101 号: 12 ページ: 1270-1279
  • DOI: 10.1099/jgv.0.001493
  • 査読あり
• [雑誌論文] Enhancement of guinea pig cytomegalovirus infection by two endogenously expressed components of the pentameric glycoprotein complex in epithelial cells (2020)
  • 著者名/発表者名: Okumura Misaki、Matsuura-Miura Miku、Makino Reina、Miura Takuya、Noguchi Kazuma、Majima Ryuichi、Koshizuka Tetsuo、Inoue Naoki
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 10 号: 1 ページ: 8530-8530
  • DOI: 10.1038/s41598-020-65545-5
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Activation of c-Jun by human cytomegalovirus UL42 through JNK activation (2020)
  • 著者名/発表者名: Koshizuka Tetsuo、Inoue Naoki
  • 雑誌名: PLOS ONE 巻: 15 号: 5 ページ: e0232635-e0232635
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0232635
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Clinical Diagnostic Testing for Human Cytomegalovirus Infections (2020)
  • 著者名/発表者名: Razonable Raymund R、Inoue Naoki、Pinninti Swetha G、Boppana Suresh B、Lazzarotto Tiziana、Gabrielli Liliana、Simonazzi Giuliana、Pellett Philip E、Schmid D Scott
  • 雑誌名: The Journal of Infectious Diseases 巻: 221 号: Supplement_1 ページ: S74-S85
  • DOI: 10.1093/infdis/jiz601
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Evaluation of the indirect and IgM‐capture anti‐human cytomegalovirus IgM ELISA methods as confirmed by cytomegalovirus IgG avidity (2019)
  • 著者名/発表者名: Ikuta Kazufumi、Koshizuka Tetsuo、Kanno Ryoko、Inoue Naoki、Kubo Takahiko、Koyano Shin、Suzutani Tatsuo
  • 雑誌名: Microbiology and Immunology 巻: 63 号: 5 ページ: 172-178
  • DOI: 10.1111/1348-0421.12683
  • NAID: 40021927513
  • 査読あり
• [学会発表] 抗ヘルペス薬の臨床的課題と新規薬剤探索 (2022)
  • 著者名/発表者名: 井上直樹
  • 学会等名: 日本薬学会第142年会
• [学会発表] モルモット胎盤由来上皮細胞株におけるモルモットサイトメガロウイルスの感染性と宿主遺伝子発現の相関解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 長野愛里香, 小栗(竹田)美瑛, 髙橋圭太, 腰塚哲朗, 井上直樹
  • 学会等名: 日本薬学会第142年会
• [学会発表] サイトメガロウイルス糖蛋白五量体による細胞指向性とウイルス遺伝子発現の抑制 (2021)
  • 著者名/発表者名: 井上直樹
  • 学会等名: 第68回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] サイトメガロウイルスワクチンの評価マーカーとしての抗体依存性細胞貪食に対する測定系構築および解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 山口佳祐, 髙橋圭太, 馬島龍一, 石山貴皓, 腰塚哲朗, 井上直樹
  • 学会等名: 第68回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] GPCMV BACに導入した9kbの欠失領域が個体での感染に与える影響とその領域にコードされる遺伝子産物 (2021)
  • 著者名/発表者名: 岩瀬慶彦, 馬島龍一, 野口和真, 佐藤啓介, 小林祐希, 石山貴皓, 高橋圭太, 山口佳祐, 増田幸奈, 腰塚哲朗, 井上直樹
  • 学会等名: 第68回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] 抗ヘルペスウイルス化合物147B3作用機序の解明 (2021)
  • 著者名/発表者名: 近藤紘生, 腰塚哲朗,石岡賢, 錫谷達夫,髙橋圭太,井上直樹
  • 学会等名: 第68回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] モルモットにおけるサイトメガロウイルス感染動態とサイトカイン産生の解析 (2020)
  • 著者名/発表者名: 小島さやか，山口佳祐，井上直樹
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2020
• [学会発表] 抗CMV薬のスクリーニングにより同定した化合物147B3の作用機序の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 江坂里奈，井上直樹，腰塚哲朗
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2020
• [学会発表] サイトメガロウイルス糖蛋白質Bの中和と型別に関与するAD2領域を用いた血清学的検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 野間早織，井上直樹
  • 学会等名: 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2020
• [学会発表] サイトメガロウイルス感染に対するワクチンの必要性、その前臨床ならびに臨床開発の状況と問題点 (2020)
  • 著者名/発表者名: 井上直樹
  • 学会等名: 第61回日本臨床ウイルス学会
  • 招待講演
• [学会発表] モルモットサイトメガロウイルスに対する抗体依存性細胞貪食の測定系構築 (2020)
  • 著者名/発表者名: 山口佳祐，高橋圭太，馬島龍一，腰塚哲朗，井上直樹
  • 学会等名: 第32回日本薬学会微生物シンポジウム
• [学会発表] モルモットサイトメガロウイルスGP119.1のIgG結合機能解析 (2020)
  • 著者名/発表者名: 馬島龍一，腰塚哲朗，井上直樹
  • 学会等名: 第32回日本薬学会微生物シンポジウム
• [学会発表] モルモットサイトメガロウイルスに対する抗体依存性免疫応答：モルモットFcγ受容体の解析 (2020)
  • 著者名/発表者名: 小河原瑛彦，馬島龍一，髙橋圭太，腰塚哲朗，井上直樹
  • 学会等名: 第32回日本薬学会微生物シンポジウム
• [学会発表] ヒトサイトメガロウイルスの「五量体」を構成する糖タンパク質群を発現する細胞を抗原とした中和抗体誘導能の簡便な比較評価 (2019)
  • 著者名/発表者名: 大林洋絵、古賀悟、長野愛里香、奥村晃弘、小栗弘大、安部真央、腰塚哲朗、井上直樹
  • 学会等名: 第56回日本細菌学会中部支部総会
• [学会発表] モルモットサイトメガロウイルスがコードする細胞死抑制タンパクgp38.1の同定と培養細胞および動物個体における機能の解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 野口和真、馬島龍一、岩瀬慶彦、山田壮一、腰塚哲朗、井上直樹
  • 学会等名: 野口和真、馬島龍一、岩瀬慶彦、山田壮一、腰塚哲朗、井上直樹
• [学会発表] サイトメガロウイルスの感染効率に影響する宿主因子とウイルス多型の解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 長島和希，小林稜，小栗弘大，腰塚哲朗，井上直樹
  • 学会等名: 第67回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] 細胞指向性を決定する複合体の構成成分であるGP131とGP133の共発現によるモルモットサイトメガロウイルス感染の亢進に関する研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 奥村美紗貴，牧野怜奈，三浦（松浦）未来，井上直樹
  • 学会等名: 第67回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] サイトメガロウイルスに対するワクチン候補抗原の至適化を目的としたヒト型抗体のスクリーニング系構築 (2019)
  • 著者名/発表者名: 古賀悟，小栗弘大，竹腰正隆，腰塚哲朗，井上直樹
  • 学会等名: 第23回日本ワクチン学会学術集会
• [備考] 岐阜薬科大学感染制御学研究室
  • URL: https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/kansen/
• [備考] 岐阜薬科大学生命薬学大講座感染制御学研究室
  • URL: http://sv1.gifu-pu.ac.jp/lab/kansen/