研究課題
基盤研究(C)
エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に代表されるオメガ3脂肪酸は糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病に有効性を発揮する可能性が古くより示唆されてきたが、その作用機序についてはよくわかっておらず、有効性に関しても議論の域にあると言える。近年、申請者らを含む国内外の活発な研究により、EPAやDHAは体内で代謝されることでより活性の強い抗炎症性分子として機能している事が判明し、オメガ3脂肪酸摂取後の機能的代謝物産生の有無が有効性を発揮する鍵を握っていると言える。本研究では糖尿病の病態形成を抑制する新規オメガ3脂肪酸代謝物を同定し、その作用機序を解明することを目的とする。
植物性食用油の脂肪酸組成は用いられる植物原料により異なっている。αリノレン酸に代表されるω3脂肪酸は、哺乳類の体内で合成できない必須脂肪酸であり、食物中の脂肪酸組成が体内存在量に大きく影響する。αリノレン酸を豊富に含む亜麻仁油を用いてω3脂肪酸の効果を検討した結果、高脂肪・高糖質餌を与えて作製した糖尿病モデルマウスにおいて、亜麻仁油を餌に配合することで糖尿病が改善することが分かった。そのメカニズムとして、腸内細菌によりαリノレン酸から作られるαKetoA(アルファケトエー)という代謝物がマクロファージに働きかけ、脂肪組織炎症を抑制することで糖尿病を改善することが明らかになった。
一般に健康に良いとして知られるω3脂肪酸であるが、近年の研究により、身体の中で高活性代謝物に変換されることで生体調節機能を発揮することが示されている。そのため、個々の遺伝的背景による代謝酵素の活性の違いがω3脂肪酸摂取後の効果を左右することが示唆されてきた。さらに本研究により、腸内細菌もまた機能性代謝物への変換に重要な役割を果たすことが明らかになった。腸内細菌叢は個人差が大きいことでも知られる。そのため、個々の遺伝的背景や腸内細菌叢の違いに基づいて最適な栄養指導や医療を提供する個別化/層別化栄養・医療に向け、「食事-腸内細菌叢-代謝物-免疫制御」といった複数の要因を捉えることが重要である。
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