研究課題/領域番号 |
19K07673
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 講師 (60437556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 低酸素 / 大腸がん / インターロイキン-33受容体 / 転移抑制 / インターロイキン-33 / sST2 / IL-33 / 増殖抑制 / HIF / 可溶性IL-33受容体 / がん微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、インターロイキン33(IL-33)のデコイ受容体であるsST2の発現量が低酸素下の大腸がん細胞では顕著に低下することを新たに見出した。sST2はIL-33誘導性の炎症性がん微小環境を修飾して大腸がんの悪性進展を抑制する。そのため、大腸がん腫瘍組織内の低酸素領域でもsST2発現低下が認められる場合、悪性進展が促進されることが予想される。そこで本研究では、大腸がん腫瘍内の低酸素領域でのsST2の発現低下とその改善による悪性度の軽減について検討する。これらを立証できれば、腫瘍内の低酸素領域におけるIL-33誘導性の炎症性がん微小環境を標的とした新たな大腸がんの治療法の手掛りとなりうる。
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研究実績の概要 |
これまでに、腫瘍組織中のがん細胞における低酸素誘導性のsST2発現低下の回復が炎症性微小環境の改善と腫瘍増殖抑制に有効であることを、マウス大腸がんNM11細胞を用いて示した。しかしながら、NM11細胞は低転移性のため現移植モデルでは他臓器への転移は検出されず、低酸素誘導性のsST2発現が転移に及ぼす影響については不明のままであった。そのため最終年度では、マウス大腸がんLuM1細胞を用いた肺転移モデルにより転移への影響を検討した。LuM1細胞はNM11細胞より派生した高転移性の細胞であり、LuM1細胞担がんマウスの肺表面に形成される転移結節の観察により、転移能を容易に評価することが可能である。低酸素応答性にsST2を発現するプラスミドベクター(5HRE-sST2)をLuM1細胞にトランスフェクションし、低酸素誘導性のsST2の発現低下が抑制された細胞を作製した。これをマウス皮下に移植し、大腸がん腫瘍の低酸素領域におけるsST2発現を誘導した。その結果、腫瘍組織中の炎症性の微小環境が改善され、炎症性サイトカインの発現低下、抑制性T細胞および腫瘍関連マクロファージの減少、そして腫瘍血管密度の低下が認められた。また、大腸がん腫瘍の低酸素腫瘍領域限定的なsST2発現の回復に伴い、腫瘍増殖と肺転移が顕著に抑制された。 最終年度の成果を併せ、本研究期間全体で、大腸がん腫瘍組織中の低酸素領域のがん細胞では抗腫瘍的なsST2が顕著に低下すること、それがHIF-IL-33-GATA3軸を介した分子機序により誘発されること、大腸がん腫瘍の低酸素領域に限定したsST2発現の回復は腫瘍増殖抑制効果および転移抑制効果を示すことを明らかにした。本研究で得られた知見から、遠隔転移を伴う悪性の大腸がんの治療に低酸素腫瘍領域のsST2が有用なターゲットとなる可能性が考えられる。
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