研究課題
基盤研究(C)
本研究は、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell [MSC])が、癌関連線維維芽細胞(Cancer Associated Fibroblast [CAF])の元となり膵管癌間質を構成するようになる分化メカニズムを明らかにし、in vitro三次元培養でその分化過程を再現することである。このため、マウス膵管癌マウスへGFP標識MSC細胞株を移入してCAFを調整して遺伝子発現を解析し、CAFで活性化しているシグナル伝達系路を同定する。さらにGFP標識MSC細胞株に対して、CAFで活性化しているシグナル伝達系路の活性化を誘導することで、分化過程の再現をすすめる。
代表者は、ドキシサイクリンの投与により膵管癌を発症し、投与開始から2週間ほどで死亡するマウス発癌モデルを完成させた。これを用いて骨髄キメラを作製して解析し、膵臓の間質を構成する癌関連線維芽細胞(CAF)が、骨髄より動員される細胞であることを明らかにした。インビトロの実験で、骨髄に由来する間葉系幹細胞がCAFになることを確認し、1細胞レベルでの遺伝子発現解析により、骨髄由来のCAFに特徴的なバイオマーカーと活性化しているシグナル経路を見出した。ヒト膵癌の間質は、骨髄由来のCAFに特徴的なバイオマーカーを発現していることも確認できたので、膵管癌間質の新たな発生経路を見出したと結論する。
膵臓癌と診断された患者の平均生存期間は8か月程度であり、これは、化学療法や放射線療法への抵抗性によると考えられている。膵臓癌の治療抵抗性については、膵臓癌組織で観察される豊富ながん間質の出現との関係が指摘されており、治療抵抗性の解消には、間質の発生と進展のメカニズムを理解して対処法を開発することが必要である。本研究は、膵管癌発生の瞬間を再現して、骨髄に由来する細胞が膵臓癌の間質を構成していることを明らかにした。加えて、CAFの同定で利用できるバイオマーカーの開発に成功したことで、膵臓癌の克服につながる研究成果をあげたと考えている。
すべて 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 3件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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