研究課題
基盤研究(C)
申請者らは、子宮腺筋症51症例の全エキソン配列解析を終了し、約40%は発がんドライバー遺伝子KRASやPIK3CAに変異を有することが世界で初めて明らかになった。しかし凍結検体に含まれる腺筋症細胞の含有率の低さ(~5%)に起因する遺伝子変異頻度の低さが課題である。今回、申請者はLCM法を用いて、凍結検体から子宮腺筋症細胞を純化する。純化した腺筋症細胞を用いたゲノム解析により、高頻度にゲノム異常を検出する。同定したゲノム異常の機能解析を、疾患モデル細胞培養系を用いて行う。本研究では、高感度ゲノム異常検出法と機能解析系を組み合わせることにより、子宮腺筋症の病因・病態を分子レベルで明らかにする。
申請者は、良性疾患である子宮腺筋症とその発生母地である正所性子宮内膜のゲノム異常の検出に世界で初めて成功し、Nature Commun誌、Cell Death Disease誌の発表に至った。具体的には、子宮腺筋症という疾患は、KRAS変異が約4割の症例において好発すること、発生母地である正所性子宮内膜においてKRAS変異クローンが高頻度に認められること、プロゲスチン治療抵抗性との相関性を明らかにした。さらに子宮腺筋症の発症リスク因子である経産婦の子宮内膜においてKRAS変異が好発することから、妊娠による物理障害がゲノム異常を介して子宮腺筋症を発症している可能性を示唆することが出来た。
本研究では、子宮腺筋症のゲノム異常を世界で初めて明らかにした。その結果、子宮腺筋症という疾患は、子宮内膜症と同様に正所性子宮内膜において共通の起源となるクローンを有することが明らかとなり、両疾患が高頻度に併発するという臨床上の特徴を分子レベルで説明することが出来た。さらにKRAS変異クローンは、プロゲステロン受容体発現抑制を起こし、実臨床で用いられているプロゲスチン抵抗性を獲得している可能性を示唆した。本研究は、ゲノム解析というアプロ―チにより、子宮内膜症と腺筋症との関係を分子レベルで明らかにしただけでなく、個別化医療の対象となりうる疾患であることを明らかにした点が本研究成果の意義と思われる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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