研究課題
基盤研究(C)
難治ながんの1つである膵臓がんに対する新たな治療戦略として、我々はWT1がんワクチン療法と抗がん剤治療との併用療法の有効性を臨床試験を通して報告したが、全例に顕著な効果は一部の症例のみであった。今回の研究では、本治療法の臨床効果の中心を担う免疫担当細胞であるWT1抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の機能的・質的な解析を行い、効果が顕著に認められた症例でのWT1特異的CTLの特性が、効果不十分な症例のものに比較してどう異なるのか?、特にどのようなCTLがメモリーT細胞に分化し、どのように長期維持され、臨床効果につながるのか?という疑問を解明し、本治療法の更なる効果改善に寄与する研究を行う。
WT1は有望ながん関連抗原である。進行膵がんに対する抗ガン剤とWT1がんワクチン併用治療の経過で誘導されるWT1に対する細胞傷害性T細胞,WT1-CTLの質的・機能的変化を評価した。治療後に誘導されるWT1-CTLの働きとしてエフェクター機能の獲得だけでなく、記憶細胞に分化して抗腫瘍免疫作用を長期に維持することが、結果、長期の臨床効果に重要であった。臨床効果のあった患者間で共有されるWT1-CTLのT細胞受容体,TCRクローンが存在することを明らかにした。今後これらのTCRを免疫担当細胞に導入する新たながん免疫療法の開発につなげる。
今回の成果はWT1を標的としたがん免疫療法(細胞療法)の開発につながる。個々の患者のがん特異的なネオ抗原に対するT細胞受容体の同定が個別化医療となることに対して、汎腫瘍抗原であるWT1に特異的なキラーT細胞が持つT細胞受容体を同定することは、膵癌のみならずWT1を発現するがんを患った患者に応用が可能であることを意味する。免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいとされる、いわゆる“cold”ながんに対する治療戦略を将来発展させうる1つの成果である。
すべて 2022 2021 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
J Immunother.
巻: 45 号: 1 ページ: 55-66
10.1097/cji.0000000000000405
Oncol Lett.
巻: - 号: 2
10.3892/ol.2022.13184
Cancer Immunol Immunother.
巻: 70 号: 1 ページ: 253-263
10.1007/s00262-020-02675-9
Medicine (Baltimore)
巻: 98 号: 33 ページ: e16771-e16771
10.1097/md.0000000000016771