研究課題/領域番号 |
19K07792
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
芹澤 昌邦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (00569915)
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研究分担者 |
石川 吉伸 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (00305004)
大島 啓一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10399587)
釼持 広知 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (50602637)
盛 啓太 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (50727534)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | がんゲノム医療 / 分子標的治療 / AI / VUS |
研究開始時の研究の概要 |
がんゲノム解析で検出された腫瘍特異的遺伝子変異の大部分は、機能的意義が不明な遺伝子変異として放置されており、この現状は患者のゲノム情報が有効に利用されているとは言い難い。この放置された遺伝子変異の中から、増殖経路の活性化や薬剤感受性の変化を引き起こす「機能獲得型遺伝子変異」を見つけ出し、新たな治療標的の同定や薬剤の適応症例の拡大につなげるための新たな手段を確立することが、「がんゲノム医療」の実効性をさらに高めるうえで必要不可欠である。本研究では、日本人がん患者の腫瘍特異的遺伝子変異について「がん種横断的な網羅的機能評価」を行い、その結果に基づき予測精度の高い「遺伝子変異機能推定法」を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では、研究対象の遺伝子において日本人がん患者から検出された体細胞変異に対し選択基準を設けることなく網羅的に機能評価を行う。解析対象変異を培養細胞株において発現するためのプラスミドの構築において、当初有していた技術では繰り返し配列の領域における数十塩基の挿入・欠失などを含む約1~2割の変異に対応できていなかった。本年度行った技術改良により、新たに2種類の変異導入方法を確立した。この3種類の構築方法を適宜選択することでほぼすべての変異に対し対応可能となった。 培養細胞株において解析対象とする変異を一過性で発現するためのプラスミドおよび、Flp-Inシステムによって当該変異を安定的に発現可能な細胞株を樹立するために用いるプラスミドの構築を進めた。EGFR遺伝子の変異78種類、KIT遺伝子の変異43種類、NTRK1遺伝子の変異 18種類の作成を完了した。EGFRについては、複数の変異を複合的に有するプラスミドの構築も行った。 変異の機能解析にあたっては、使用する細胞株が有している野生型遺伝子の影響を排除しバックグランドを低減する必要がある。そこで、ゲノム編集によりEGFRおよびKIT遺伝子のノックアウト細胞株をHEK-293およびNIH-3T3細胞株を用いて樹立した。あわせて、下流のシグナル経路への各変異の影響を評価するLuc assayの検出感度の向上を目的に、使用するLucレポーターの変更と実験条件の最適化を行った。 EGFR変異については、ホモロジーモデリングにより各変異を構築し、定温定圧条件下における分子動力学シミュレーションを行った。使用したEGFRの立体構造モデルは、細胞外ドメインでは3QWQ.pdbを、キナーゼドメインについては3w32.pdbを使用した。MM-GBSA法により、各変異体の物理化学的および構造的変化を反映する数値情報としてギブズエネルギーを算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析対象の変異体を培養細胞株において発現するためのプラスミドの構築法を新たに開発することで、3種類の方法を使い分けることが可能となり、ほぼ全ての変異に対応可能になっただけでなく、効率よく作ることができるようになった。機能解析に使用する細胞株が有している野生型遺伝子の影響を排除するためのノックアウト細胞株の作成法を確立するとともに、シグナル伝達経路の活性を測定するためのLucレポーターの最適化も行うことができた。EGFRについては、各変異体の物理化学的および構造的変化についての数値情報としてギブズエネルギーの算出を終了することができた。想定外であった点は、分子動力学シミュレーションを行うために導入した静岡がんセンターのサーバーシステムの運用において、オペレーティングシステムと演算を行うためのGPUの間の相性の問題が発生し、その解決に時間を要した点である。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞株において変異体を発現させるためのプラスミドを構築済みの変異については、生物学的評価を着実に進めると共に、並行して進めている分子動力学シミュレーションの解析結果との相関について検討を進める。併せて検討対象とする遺伝子の拡充を進め、受容体チロシンキナーゼだけでなく、MAPキナーゼも評価対象とする。現在は変異の機能評価において関連シグナルの活性を測定することを目的としたLucレポータアッセイによる評価を主軸としているが、活性化に複合体の形成が必要な遺伝子もあるため、変異がその複合体形成に与える影響を調べることができるようにする。すでに、生物発光共鳴エネルギー転移 (BRET)によるタンパク間相互作用の解析の導入の検討を始めており、本年度中に変異の機能評価に用いることができるようにする。
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