研究課題
基盤研究(C)
神経管異常(NTD)は1000人に1から2人の高確率で起こる中枢神経組織の先天異常である。NTDはさまざまな機能障害を引き起こし、重篤な場合では死に至る場合もあるが、その発症機構はいまだ解明されていない。抗てんかん薬として使用されるバルプロ酸(VPA)は胎児に作用するとNTDを引き起こす。本研究ではVPAの作用機構を解析することで、神経管発生機構やNTD発症機構の解明を目指す。
神経管異常は中枢神経の先天的形成異常であり、運動機能などに支障を来す疾患であるが、発症の仕組みはいまだ明らかでない。本研究では、神経管異常を引き起こすバルプロ酸を用い、神経管異常発症の仕組みの一端を解明することを目的とした。ES細胞由来の神経細胞にバルプロ酸を作用させると、細胞死の亢進が見られた。バルプロ酸により発現が上昇する遺伝子をRNA-Seqにより選び、強制発現すると細胞死が亢進した。shRNAで着目遺伝子の機能を阻害すると、細胞死抑制の傾向が見られた。したがってバルプロ酸は現在着目している遺伝子を介して神経細胞死を誘発していること、この細胞死が神経管異常に関わっていることが考えられた。
神経管異常は中枢神経の先天的形成異常であり、脊椎二分症や脳ヘルニアといった中枢神経の奇形を引き起こし、運動機能などに支障を来す。重篤な場合では出生直後に死にいたる。神経管異常の発症率は0.1%から0.2%と極めて高く、生涯にわたって健康面に問題を抱え続けることになるため、その発症機構の解明および予防法や治療法の開発は医学的にも社会的にも重要な課題である。本研究では神経管異常を誘発するバルプロ酸を用い解析を行ったところ、バルプロ酸は神経細胞死を誘発している可能性が示唆された。また、その作用を介在する遺伝子が候補として挙げられた。これらの結果は神経管異常の仕組みの解明や予防に資すると考えられる。
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Developmental Dynamics
巻: 251 号: 1 ページ: 75-94
10.1002/dvdy.438
J. Neurosci.
巻: Online ahead of print 号: 22 ページ: 4795-4808
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