研究課題/領域番号 |
19K07873
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
岡崎 真理 城西大学, 薬学部, 教授 (50272901)
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研究分担者 |
坂本 武史 城西大学, 薬学部, 教授 (20187040)
袁 博 城西大学, 薬学部, 教授 (10328552)
玄 美燕 城西大学, 薬学部, 助教 (50711751)
岩田 直洋 城西大学, 薬学部, 助教 (50552759)
松崎 広和 城西大学, 薬学部, 助教 (80582238)
日比野 康英 城西大学, 薬学部, 教授 (10189805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 虚血性脳血管障害 / フェルラ酸誘導体 / 予防的治療薬 / 脳血流維持作用 / 光血栓モデル / 微小血管内皮細胞 / 血液脳関門保護作用 / フェロトーシス / 抗凝固作用 / 内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS) |
研究開始時の研究の概要 |
脳梗塞発作は、突発的に生じ、処置が遅れるほど予後不良となることから、発症前からの予防的投与によって発作時の脳保護にはたらく新たな予防的治療薬が必要であると考えられる。 天然化合物であるフェルラ酸(FA)の誘導体FAD012は、慢性予防投与によって脳梗塞モデルの脳血流低下を顕著に抑制して梗塞巣形成を縮小するが、その作用メカニズムは明らかではない。 そこで本研究では、FAD012の虚血時脳血流維持作用に寄与する分子機構を培養細胞を用いて解明することを目的とした。さらに、FAD012の臨床応用を想定し、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)療法との併用に関する検証を行うこととした。
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研究実績の概要 |
脳梗塞発作では可及的速やかな血流再開が治療の鍵となるが、処置が遅れるケースも多い。本研究は、発症前からの予防的投与によって脳梗塞発作時の脳保護にはたらく新たな予防的治療薬の開発を目的とし、これまでに候補化合物としてフェルラ酸誘導体FAD012を見出している。 ラット光血栓性脳梗塞モデルを用いた実験において、FAD012を予防投与すると、中大脳動脈へのレーザー光照射による脳血流量の低下が緩徐となり血栓の形成が遅延した。また、血栓形成後の脳血流量が維持され、脳梗塞巣の形成が抑制された。さらに、脳梗塞巣の周辺領域において血管内皮細胞や密着結合の障害が抑制され、血液脳関門(BBB)が保護された。FAD012は、抗酸化作用および血管内皮保護作用をもつことから、ラジカル反応を抑制して血栓形成を抑制するとともに、血管内皮を介した血管拡張作用を発揮した可能性が考えられた。現在、FAD012をアルテプラーゼ(tPA)と併用することによって、tPAの出血性脳梗塞のリスクを低減できるかについて検討を行っている。 FAD012の血管内皮保護の分子メカニズムを明らかにするため、ラット脳微小血管内皮細胞を過酸化水素で処理し、酸化ストレス(擬似的虚血障害)を負荷して誘導した細胞死に対するFAD012の効果を検討した。FAD012は、制御された壊死性細胞死であるフェロトーシスを抑制し、その効果はFAや脳保護薬であるエダラボンよりも強かった。FAD012は細胞膜の酸化的損傷に伴う4-HNE生成およびLDH漏出に対する抑制効果を示し、Nrf2経路の上方制御を介してHO-1の発現を増大させることが明らかになった。 以上の結果から、FAD012の予防投与は虚血時の内皮細胞の酸化ストレス障害を抑制して脳血管機能を保護し、虚血周辺部位の脳血流を維持することによって脳保護効果を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度までは、おもに新型コロナウイルス感染症拡大の影響に起因した学生教育負担の増大に加えて物品の調達に障害が生じたことなどから、研究に遅れが生じていたが、2023年度は当初予定していた計画に沿った進捗がみられた。 当初の研究計画は、1. FAD012によるeNOSの活性増大に関わる細胞内経路の同定、2. FAD012のターゲット分子の推定、3. ラット血栓性脳梗塞モデルを用いたFAD012併用によるt-PAの治療可能時間域への影響の検討、4. FAD012の大量合成と新規誘導体のデザイン・合成、の4項目である。 1についてはeNOS活性化に関与するリン酸化について検証したが、有意差を示すデータは得られなかった。FAD012はeNOS活性を増大させるのではなく、内皮細胞保護効果によって結果的にeNOS活性が維持されると考えられる。したがって、この項目については検討を終了することとした。2についてはFAD012によるNrf2経路の上方制御やフェロトーシス抑制作用を明らかにした。現在、DNAアレイの結果をもとに新しいターゲットの検証を進めている。3については現在データを集積中であるが、概ね期待通りの結果が得られている。4のFAD012の大量合成についてはすでに確立済みである。
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今後の研究の推進方策 |
以下の二つの項目について、優先して進める。 ① FAD012のターゲット分子の推定:FAD012には、微小毛細血管の保護作用が示唆されている。これには、細胞死に関わる転写因子や細胞保護因子などの種々の蛋白質発現調節が関与することが推定される。その検証を目的として、ラット初代脳微小血管内皮細胞を用いて、DNAアレイによる遺伝子発現の網羅的解析を行い、得られた結果を定量PCRにて確認した後、FAD012のターゲット分子の同定を試みる。 ② ラット血栓性脳梗塞モデルを用いて、FAD012の血管内皮保護作用によるt-PA誘発性形質転換抑制効果とt-PA治療可能時間に与える影響を検証する。t-PAを血栓形成後にタイミングを変えて投与し、FAD012の併用の有無によってt-PAがより遅い投与タイミングでも効果を示すか検証する。
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