研究課題
基盤研究(C)
本研究では、「シナプス分子に対する未知の新規自己抗体が難治性精神症状を形成する」という新しい仮説の検証を目的とする。近年脳炎患者から様々なシナプス分子に対する自己抗体が発見されてきており、特に抗NMDA受容体抗体と統合失調症の関係が指摘されている。しかし、その他のシナプス分子に対する自己抗体と精神疾患の関係は未解明である。本研究では免疫組織化学的手法や質量分析法等により、精神疾患のリスク遺伝子産物をはじめとしたシナプス分子に対する新規自己抗体を発見することを最初のマイルストンとしている。病態モデルマウスの解析も併せてすすめる。
統合失調症患者で脳炎でも報告のないシナプス接着分子NCAM1に対する自己抗体が約5.4%(12名/223名)に存在することを発見した(Shiwaku et al. Cell Rep Med. 2022)。さらに2.1%(8名/387名)にNRXN1に対する自己抗体も発見した(Shiwaku et al. Brain Behav Immun. 2023)。これらの自己抗体陽性の患者からIgGを精製し、マウスの髄液中に投与することで、自己抗体が、NCAM1やNRXN1の分子間結合を阻害し、シナプス/スパインの減少につながり、さらに統合失調症関連行動を誘発することを示した。
現在の精神科領域の研究の中心課題は、難治性の病態の治療・バイオマーカーの確立・早期介入などである。本研究計画で明らかになった精神症状の原因となりえる自己抗体は、そのままバイオマーカーとなりえる。また、今後これらの自己抗体を除去する免疫学的治療の妥当性を治験等で明らかにできれば、難治性の病態の治療につながる。さらには、バイオマーカーとして、発症前からの早期介入にも寄与するなど、精神科領域の疾病概念や治療を大きく変える将来展望と波及効果がある。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)
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