研究課題/領域番号 |
19K08087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター) |
研究代表者 |
松永 秀典 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター), 精神科, 医師 (70603843)
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研究分担者 |
福森 亮雄 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (00788185)
多田 敬典 至学館大学, 健康科学部, 教授 (20464993)
田中 惠子 新潟大学, 脳研究所, 非常勤講師 (30217020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | NMDA受容体抗体 / ウサギ網赤血球由来蛋白合成システム / コムギ胚芽由来蛋白合成システム / ラジオリガンドアッセイ / 膜蛋白 / cell based assay / マウス脳ライセート / 抗NMDA受容体抗体 / ウサギ網赤血球系蛋白合成システム / 精神疾患 / 自己免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症や双極性障害の病因は未解明であるが、最近、神経伝達物質であるNMDAの受容体に対する自己抗体が、精神症状を伴う脳炎の原因となっていることが判明した。さらにこの自己抗体は、一部の統合失調症や睡眠障害にも見いだされており、この抗体がどのような疾患にどの程度関与しているかを幅広く調べる必要がある。しかし、現行の測定法は培養細胞を用いるため手間と時間がかかり、多検体を調べるには不向きである。本研究では、感度・特異性の高いラジオリガンドアッセイを用いて、多検体同時に抗NMDA受容体抗体を測定する方法を開発し、本抗体の病的意義の解明を目指している。
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研究実績の概要 |
本研究では、無細胞蛋白合成系を用いてNMDA受容体サブユニットを膜上に発現させ、それを可溶化したものを抗原として、抗NMDA受容体抗体を検体で簡便に検出できる測定系の開発を目指している。前年度までは、ウサギ網赤血球ライセート由来の蛋白合成系で受容体蛋白を合成したが抗体をとらえることができず、分子量が大きいため合成量が少ないことが一因と考えられた。また、コムギ胚芽由来の合成系を使った実験では一様に非常に高い値をとり、合成した蛋白同士が重合するためではないかと考えられた。 2022年度は、まず、コムギ胚芽由来のキットで、重合を防ぐとともに本来の立体構造を保つために、ジスルフィド結合を阻害しない系で蛋白合成を行ったが、やはりうまくいかず、原因として膜への発現ができないことが考えられた。ジスルフィド結合を阻害しない系で膜上に蛋白を発現させるキットは市販されておらず、蛋白合成系の製造販売元にこの実験を委託している(結果未)。 ウサギ網赤血球ライセート由来の系では、分子量を小さくするとともに膜を使わない方法として、病気と関連するエピトープを含む細胞外部分(受容体サブユニットの約4割の大きさ)のみをコードするプラスミドを作成し、これを用いて蛋白を合成して抗体測定を試みた。しかし、やはり抗体をとらえられなかった。 これらの結果から、無細胞蛋白合成系では自然な形の蛋白ができない可能性を考え、培養細胞に受容体蛋白を発現させる系を作成して抗体測定を行ったところ、抗体を検出できた(これは現行の抗体診断法であるcell based assayに相当)。 自然な形状の抗原を使う他の方法として、マウスの脳ライセートの膜成分からNMDA受容体を立体構造を損なわずに可溶化して電気泳動したものを抗原として使ったところ、抗体陽性髄液中の抗NMDA受容体抗体をとらえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020~2021年度の2年間は、COVID-19の流行、研究分担者の転勤、および、抗SARS-CoV-2抗体測定を行う2つの研究に時間と労力を使ったため、本研究を進めることができなかった。 2022年度は、上記のように複数の方法で測定系の開発を試みたところ、無細胞系では成功しなかったが、培養細胞を用いる方法、マウスの脳を用いる方法では抗体を検出することができた。しかし、本来の目標である多検体に対して簡便に抗体を検出する測定系は未確立である。
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今後の研究の推進方策 |
2つの無細胞蛋白合成系を利用する方法に関して、これまでの蛋白合成手順・測定手順を見直すことにより、可能性を再検討する。 コムギ胚芽由来の蛋白合成については、ジスルフィド結合を阻害せずに膜上に受容体を発現させる方法(製造販売元で実験予定)の結果を待ち、可能性があればさらに進める。 マウスの脳ライセートの膜成分から抽出したNMDA受容体を抗原として使って、簡易に抗体を測定できる方法の開発も検討する。
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