研究課題
基盤研究(C)
頭頸部癌の放射線治療は、副作用のために患者に我慢を強いる「辛い」治療となっている。近年発展したスポットスキャニングIMPT(強度変調陽子線治療、intensity-modulated proton therapy)を用いて線量を細かく制御することにより、腫瘍の線量を下げることなく、副作用の原因となる皮膚、唾液腺、舌、粘膜の正常臓器線量を全て大幅に低減させ、患者にとって「辛くない」頭頸部癌放射線治療法を確立することを目的とする。頭頸部領域の様々な癌で、皮膚炎、口渇、味覚障害、粘膜炎を低減させたスポットスキャニングIMPTが実施可能であることをシミュレーションにて示し、汎用性のある技術を開発する。
皮膚炎、口渇、味覚障害、粘膜炎、嚥下障害といった副作用を低減するためのDVH解析、NTCPモデル作成、プランニングの際の指標の設定を行った。NTCPモデルによる比較及び副作用を予測しながらプランの質を評価する試みを実臨床で開始した。患者が感じる「辛さ」を客観的に把握するためのQOL調査を実施した。実際に発生した副作用をIMPTとIMRTで比較した所、味覚障害はIMPTで低かったものの、有意差を示すには至らなかった。粘膜炎による嚥下障害はIMPTで有意に低かった。照射後6か月時点では味覚障害、粘膜炎による嚥下障害、口渇がIMPTで有意に低く、スポットスキャニングIMPTの有用性が示唆された。
頭頸部癌に対する放射線治療は、近年IMRTなどの技術開発があるものの、未だに辛い副作用を患者さんに強いている。本研究は最先端放射線治療の一つであるスポットスキャニングIMPTの技術を用いてその副作用を低減させる試みである。いくつかの副作用やその回復においてスポットスキャニングIMPTの利点が示され、その有用性が示唆される結果である。最先端放射線治療の技術開発という点で学術的な価値を持つとともに、患者のQOLをできるだけ維持した癌治療法開発という点で、社会に広く利益をもたらしうる研究と考えられる。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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