研究課題
基盤研究(C)
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後のII型エンドリークに対する,Glue(n-Butyl-Cyanoacrylate; NBCA)を用いた経カテーテル的血管塞栓術の治療シミュレーションプログラム開発を試みる.4D Flow MRI解析で可視化されたII型エンドリーク原因血管内の血流条件とGlueの流体特性を,解析アプリケーション内で統合し,各々の条件の差を血管画像内に表示することで,Glueの分布を予測する.最新の4D Flow MRI解析技術により流体を明確に評価し,Glueを用いた塞栓術の安全性と治療精度を高めて,II型エンドリークに対する標準治療指針の構築を目指す.
今年度は引き続き①4D Flow MRI解析のファントム実験と、②臨床試験を行った。①ファントム実験の解析においてはFUJIFILM社VINCENTの開発用システムを使用し、同社の開発者と協議を重ねた。今回新たに血管内における血管壁との距離により生じる速度のずれを補正するための速度補正が必須であることがわかり、これまで撮像してきたすべてのデータの速度補正を行った。これにより、血管径と流速との相関が得られるようになり、再現性の高いデータ整理が可能となった。血管外の信号ノイズもより高い精度で除去できるようになった。②臨床試験では、数多くの臨床症例のデータ蓄積ができるようになった。臨床で得た画像処理を①のファントム実験でブラッシュアップした撮像解析技術を導入することができるようになった。結果として、これまでのデータから腹部大動脈瘤のEVAR後の血管内腔におけるエネルギー準位の変化の測定が可能となった。ここで、EVAR後には治療領域におけるエネルギー損失量が増大することがわかり、また、血管解剖ごとのエネルギー損失程度の違いの傾向を探ることができた。さらに、エンドリークと動脈瘤内の信号パターンとの関連も示すことができた。これまでにin vivo, vitroの実験で得たNBCAの粘稠度のデータをVINCENT上でヒュージョンするための準備を進めている。なお、これまでの成果は、日本脈管学会、国際磁気共鳴学会や日本スカンジナビア放射線医学研究会などの国内外の学会で発表し、高い注目を得た。英語論文を鋭意作成中である。
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