研究課題
基盤研究(C)
難治性炎症性腸疾患(IBD)の一つであるクローン病は生活の質(QOL)を大きく低下させる慢性疾患で、本邦で患者数が急増している疾患であることから、早急な対応が必要である。これまでクローン病における腸内細菌叢研究は主に糞便を用いて解析されてきたが、クローン病の病変の主座は小腸であり、小腸細菌叢が病態に大きく関与していることが示唆される。本研究では小腸内視鏡で採取した小腸サンプルを用いて小腸細菌叢を解析し、クローン病の病態に関わる細菌を特定する。さらに、これらの細菌が腸管免疫系に与える影響やそのメカニズム(TNFSF15/DR3シグナル等の関与)について明らかにする。
クローン病27例と対照患者17例から小腸サンプルを収集し、細菌叢解析では2群間に有意差が見られた。菌種レベルでは大腸菌を含む18菌種がクローン病に多く認められ、大腸菌を含む9菌種を単離した。この9菌種を個別にまた混合して無菌マウスに投与し、腸管粘膜の免疫細胞をフローサイトメトリーで解析したところ、大腸において強いinterferon-γ+CD4+T細胞と弱いinterleukin-17+CD4+T細胞の誘導を認めた。無菌化IL-10KOマウスまたは抗IL-10R抗体処理した無菌化野生型マウスに大腸菌株を投与したところ、腸炎の悪化が認められ、クローン病の悪化に大腸菌の関与が明らかとなった。
クローン病を含む炎症性腸疾患は難治性の疾患で、しかも若年者に多いことから、その発症は大きな社会的損失となる。近年、様々な治療薬が開発されているが、根本的な治療法は現時点で存在しない。以前から、腸内細菌叢とこれら疾患発症との関連が指摘されていたが、これまでは糞便を用いた研究であったため、そこで分離された細菌が原因菌なのか不明であった。今回我々は、病変の主座のある小腸から腸内細菌を分離し、モデル動物マウス投与において疾患を一部再現できることを明らかにした。よって本研究で得られた知見は今後新規治療法の開発に役立つと考えられ、その点においても社会的意義の大きい研究であったと自負している。
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