研究課題/領域番号 |
19K08416
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水谷 紗弥佳 東京工業大学, 生命理工学院, JSPS特別研究員 (70790278)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大腸がん / 内視鏡生検 / 腸内細菌 / メタゲノム / メタトランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの腸内には数千種、100兆個もの腸内細菌が生息し、他の種類の腸内細菌との間で数のバランスを保ちながらひとつの生態系を形成している。腸内細菌はヒトの健康維持に欠かせない役割を持つ一方、菌組成のバランスが崩れた場合には大腸がんを含む様々な疾患の要因にもなる。本研究代表者らが大腸がん患者の糞便を用いて行った研究では、大腸がんの初期段階であるポリープや粘膜内がんを有する患者の糞便中に硫黄細菌やアミノ酸腐敗菌が多く検出された。本研究では、これらの細菌が発がんの要因であることを定量的に明らかにするため、大腸がん患者の粘膜生検(腫瘍部位と正常部位)を用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、大腸がんの前がん病変であるポリープや粘膜内がんのような小さい病変に局在する細菌の機能を定量的に解析することを目的として、大腸内視鏡生検検体を用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析の方法論確立のためのパイロット研究を行う。 第一に、国立がん研究センターで大腸内視鏡下生検により収集済みの9被験者について、回腸末端、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸などの腫瘍部位と正常粘膜の合計59検体のRNA-Seqデータを取得した。データ取得には細菌由来RNAの抽出のための特別な処理は行わなかったため、腸内細菌画分の割合は数千から数万リード(0.01%)のみであった。 便検体とは異なり、組織検体には、ヒト由来の物質が大量に含まれるため、細菌由来のDNA・RNAの取得が困難であり、細菌由来のDNAやRNAを大量に必要とするショットガンメタゲノム解析やメタトランスクリプトーム解析の標準方法は確立されていない。そこで第二に、組織検体から腸内細菌由来DNA・RNA抽出プロトコルの構築を行い、マウスの腸管粘膜で予備実験を行った。マウスの腸管粘膜から全RNAを抽出し、Poly(A)濃縮法によりマウス由来RNAを除外し、細菌由来RNAの取得を試みた。しかしながら、ショットガンシーケンスに十分な量のRNAを取得することは困難であった。 第三に、大腸内視鏡下生検により大腸がん患者から新たに収集したポリープ3検体を用い、ショットガンメタゲノム用のキットを用いてDNA・RNAを取得した。その結果、RNAの品質は十分ではなかったが、DNAは高品質のものが取得できたため、次世代シーケンサによるショットガンメタゲノム解析を行なった。その結果、全シーケンス量の0.5%が細菌由来であり、その中には、大腸がんとの関連があるBacteroides fragilis高い割合で検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状のプロトコルでは、内視鏡検体由来のRNA抽出は困難であるが、DNA抽出は可能であることがわかった。これは、RNA分子の不安定さに起因すると考えられる。そのため、今後は、目的をメタトランスクリプトーム解析からメタゲノム解析に切り替え研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
昨年、大腸腫瘍検体由来の腸内細菌DNA抽出プロトコルがNature Methodsをはじめ、複数の研究グループから発表された。本研究でもそれら手法を取り入れ、プロトコルを改変し、マウスの腸管粘膜を用いた予備実験を行う。一方、内視鏡術で切除可能な大腸ポリープは最大でも数センチメートルであり、シーケンスに十分な量のDNAが取得できる保証はない。そこで、対象を大腸がん以外のがん種にも広げ、腫瘍に局在するヒト常在菌の組成を算出する。
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