研究課題/領域番号 |
19K08638
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石井 寛 福岡大学, 医学部, 教授 (60398146)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 上葉優位型肺線維症 / 血清バイオマーカー / PPFE / バイオマーカー / 診断基準 / 弾性線維関連蛋白 / 弾性繊維蛋白 / 肺線維症 |
研究開始時の研究の概要 |
間質性肺炎は患者数が増加しており多くの病型がある。原因が特定されているものや予後不良の指定難病である特発性肺線維症については治療法が開発されている。一方、pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)は稀な病型で、臨床研究は小規模にとどまっており、治療法や予後について一定の見解が得られていない。進行する症例も多く、有効な治療法がない難治性疾患である。本研究では、生理学的、病理学的、放射線学的など多面的な解析を行うことによって臨床像の全容を把握し、さらに患者検体を用いて有望なバイオマーカーなどを探索して、有効な治療と予後の改善へつながる道筋を探求する。
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研究実績の概要 |
我々は上葉優位型肺線維症(PPFE)52症例の臨床・画像・病理所見の解析結果を報告し(Sci Rep. 2020 Jan 15;10(1):306)、これらのデータをもとに本疾患の臨床診断基準案を報告した(Sci Rep. 2020 Jan 15;10(1):306)。この診断基準案を評価する目的で、当科の症例を用いて検証し、有用性を報告した(J Clin Med. 2020 Nov 22;9(11):3761)。その他にも、PPFEにおける肺動脈の病理学的特徴(Sci Rep. 2020 Jan 15;10(1):306)、有望な血清バイオマーカーになりうる物質(Respir Med. 2020 Sep;171:106077)、PPFEの病理組織像における肺胞虚脱の機序(Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2020;37(2):212-217)、PPFEの肺病理組織像のまとめ(Histol Histopathol. 2021 Mar;36(3):291-303)、予後予測モデルについて(J Clin Med. 2021 Feb 24;10(5):895)論文報告した。さらに本年度は、胸郭扁平の進行(Respir Investig. 2022 Mar;60(2):293-299)、抗線維化薬の限定効果(Respir Investig. 2022 Jul;60(4):562-569)診断前の病変の存在(ERJ Open Res. 2022 May 9;8(2):00548-2021)、家族発症例(Respir Med and Res. 2022 82: 100954)など、それぞれ英文論文として発表した。また現在、国内多施設による共同研究として200例近くの症例が集積され、上記血清バイオマーカーの測定や原因遺伝子検索の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床面では、作成したPPFE臨床診断基準案を評価する目的で、当科の症例を用いて検証し、報告した。また、本診断基準案で重要視された生理学的な基準を基にした予後予測モデルを作成し報告した。また、現在使用可能な抗線維化薬の効果は限定的であることを報告した。基礎研究では、病理組織学的特徴に関して血管病変を含めた検討を行い報告した。弾性線維関連蛋白であるLTBP4がPPFE患者の肺組織および血清で高値を示し、予後との関連性も含めて重要な所見として報告した。これに関しては国内全国規模で検討を行うため、現在も症例と検体の集積を継続している(未発表であるが、有望なバイオマーカーとしての結果が得られつつある)。また家族内発症の2家系を報告するとともに、他施設と協力して遺伝子レベルでの病態解析が進行中である。以上の結果は、順調に研究が進展していることを意味する。
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今後の研究の推進方策 |
弾性線維関連蛋白であるLTBP4については、多施設での共同研究を通じて多数の臨床サンプルで実用性を検証中である。現在200症例近くが集積されており、これに対象疾患および健常コントロールを加えた約400検体による大規模検証の準備を進めており、有望な結果が得られつつある。また、他施設と協力してPPFE患者における各種蛋白の遺伝子多型や点変異を検証中である。具体的には、分離した末梢血白血球よりDNAを抽出し、凍結保存を行っている。解析中の遺伝子は間質性肺炎の発症に関わるといわれるMUC5B, TOLLIPの多型、テロメア長等である。PPFEに典型的な上葉のみの胸膜側の線維化が強いコア症例が集積された場合には、その症例のみを対象としてwhole genome sequencingを施行して、遺伝子異常の有無を解析する。 以上の内容を国内外の学会で報告する。
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