研究課題
基盤研究(C)
薬剤性腎障害は、腎疾患、感染症、抗腫瘍療法など様々な分野で問題となる。申請者らはメガリンを介する腎障害発症機序を解明し、メガリン拮抗薬シラスタチン(CS)を同定、バンコマイシン、コリスチン、シスプラチンによる腎障害の軽減を報告した。本研究では、CSの効果・作用機序に対する研究、腎毒性薬物との相互作用、薬物動態解析を含む非臨床・臨床試験を行う。さらにコンパニオン診断薬として尿中メガリンの薬剤性腎障害での有用性評価を行う。CSはドラッグリポジショニングの適用例で早期の臨床応用が期待されている。本研究で得られる薬剤特性に関する知見、新規検査法の開発により、新たな治療戦略、臨床応用への基盤を確立する。
薬剤性腎障害は、腎臓内科分野に限らず、感染症治療、抗腫瘍療法など幅広い分野での問題となっている。申請者らはメガリンを介する腎障害発症機序を解明し、メガリン拮抗薬シラスタチン(CS)を同定した。本研究では、CSの腎障害軽減効果をCDDPによる薬剤性腎障害モデルで検証し、有意な腎障害の軽減と、それに伴うCDDP投与量増加により安全に抗腫瘍効果を高められることを報告した。また、CDDP投与患者の薬剤性腎障害発症において、投与前の尿中メガリンと、その後のCDDP誘発性腎障害との間に有意な相関が認められることを報告し、新たな腎障害マーカーとしての有用性を示した。
腎障害は、腎疾患のみならず、併存疾患においても薬剤の制限、疾患の予後を左右するなど臨床上の大きな問題となる。これまで薬剤性腎障害軽減を目的とした治療戦略は確立されていないが、今回我々はCSを併用することで、腎毒性物質CDDPの安全な投与量増加の可能性を示した。腎障害患者への適応拡大と投与量増加による効果増強が見込まれ、革新的な治療として期待される。腎毒性の軽減戦略は、抗癌剤・抗微生物薬に限らず尿細管障害を有する物質に対して普遍的な効果を有する可能性がある。新たな診断マーカーとしての尿中メガリンと合わせ、リスクの診断と治療を通じ、腎障害軽減による広範な波及効果を持つ新たな治療戦略が期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 11 号: 1 ページ: 750-750
10.1038/s41598-020-80853-6