研究課題
基盤研究(C)
急性腎障害(acute kidney injury : AKI)の生命予後が不良なのはAKIからのリモート作用で遠隔臓器に障害をきたすことが一因である。炎症性サイトカインが悪玉因子として血液を介して遠隔臓器に到達し障害をきたす。近年神経伝達経路が免疫応答を制御すること、さらに迷走神経刺激によって炎症性サイトカインが抑制されることが明らかとなってきた。以上よりAKIからのリモート作用は悪玉因子を運ぶ血液と善玉因子を運ぶ神経が拮抗しそのバランスで決定されること、迷走神経を刺激して抗炎症作用を強めることでAKIによる遠隔臓器障害が軽減し、生命予後が改善されるという仮説を立て立証する。
急性腎障害(AKI)は臓器連関作用によって多臓器障害に陥いる。AKIによって生じる肺障害を軽減できれば生命予後改善に繋がる。本研究では、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト(GTS-21)はマウスにおける急性腎障害(AKI)後の血漿IL-6と肺障害を軽減した。GTS-21による肺障害軽減効果は脾臓摘出及び脾臓マクロファージを枯渇させたマウスで消失したが、肺胞マクロファージを枯渇させたマウスでは維持した。以上より、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストは脾臓におけるコリン作動性抗炎症経路を介してAKIによる肺障害を軽減した。
急性腎障害は高頻度、高死亡率な病態である。特に、透析を要する急性腎障害に多臓器障害を伴うと死亡率は40-50%程度と生命予後不良である。このように透析を行なっても急性腎障害の予後が悪いのは、急性腎障害からの臓器連関作用による多臓器障害によると考えられている。本研究では、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストが脾臓マクロファージでの抗炎症経路を活性化して急性腎障害によって誘導される肺障害を軽減することを初めて明らかにした。本研究は、AKIによる臓器連関障害を軽減する新たな治療ストラテジーを提唱するもので、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストの急性腎障害患者び対する臨床応用への礎となる。
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Am J Physiol Renal Physiol
巻: 332 号: 5 ページ: F540-F552
10.1152/ajprenal.00334.2021