研究課題
基盤研究(C)
二次性リンパ浮腫は、四肢腫脹、皮膚硬化、皮下脂肪増加を生じ、患者の生活の質(Quality of Life: QOL)は著しく障害する。その病態は解明されておらず、有効な薬物治療法はない。我々はこれまでに蛍光リンパ管造影法を用いたリンパ浮腫診断方法の開発、ラットリンパ浮腫モデルの開発、リンパ浮腫による皮膚硬化の病態解明、ヒトリンパ浮腫皮膚の評価方法の開発について報告した。本研究ではラットモデルでの皮下脂肪細胞の病態への関与と、エイコサペンタエン酸(EPA)のリンパ浮腫治療効果を明らかにする。さらに、ヒトリンパ浮腫症例におけるエEPAの治療効果を明らかにする。
二次性リンパ浮腫の病態をラットモデルを用いて解明した。急性期のマクロファージ、慢性期の筋線維芽細胞と増加した脂肪組織中マクロファージからTGF-β1が産生され、SMADシグナルを介し、皮膚は線維化する。線維化した皮膚組織中のリンパ管機能は低下し、リンパ還流はさらに増悪する。エイコサペンタエン酸(EPA)は、脂肪細胞増加とTGF-β1産生を抑制し、リンパ浮腫の皮膚線維化を改善した。皮膚組織中のリンパ管機能も改善した。ラットモデルとヒトリンパ浮腫皮膚から採取した線維芽細胞は、筋線維芽細胞に分化していた。培地中にEPAを添加で、TGF-β1とコラーゲンの発現が抑制された。以上は英文誌へ掲載された。
子宮がんや乳がんなど、リンパ節郭清を伴う悪性腫瘍手術後に四肢リンパ浮腫が発症する。四肢体積は増加し、慢性期には皮膚が硬くなり、生活の質(QOL)は著しく障害される。しかし、マッサージや弾性着衣での圧迫など理学療法が中心で、有効な薬物治療はない。本研究は、リンパ浮腫の病態を解明し、新しい薬物治療の可能性を示した。今後の臨床研究、新しい薬物治療の開発への橋渡しになる研究である。
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