研究課題
基盤研究(C)
中條-西村症候群は戦前から本邦で報告されてきた遺伝性炎症性難病ですが、近年、プロテアソームと呼ばれる蛋白質分解機構の異常が原因であることが判明し、世界各地から似た症例が多数報告されています。病態が明らかになるに従い、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患と同じくインターフェロン異常を呈する疾患であることがわかってきました。そこで本研究では、インターフェロン異常の存在が想定される凍瘡(しもやけ)様皮疹を呈し病理学的に液状変性を示す未診断症例について、網羅的ゲノム解析によって責任遺伝子変異を見出しその機能異常を明らかにすることで、新たな創薬ターゲットとなる機能的分子を見出すことを目指します。
4年前から継続して解析を進めている、IFN調節遺伝子の新規ヘテロ変異を見出した、乳児期から発熱と凍瘡様皮疹を反復する父子例について、本年もこの遺伝子を欠失させた培養細胞に変異遺伝子を導入しIFNで刺激後の応答遺伝子の発現をルシフェラーゼアッセイで確認する系を用い、さらに刺激や条件を変えて検証を行ったが、変異による差を認めず、患者由来細胞で認めたIFN応答異常がこの変異に関連すると証明することはできなかった。成人後に顔面の限局性脂肪萎縮で発症し、慢性的に発熱に伴って倦怠感や皮疹を繰り返すが、末梢血のmRNA発現解析でIFN signatureを認めた以外は血液検査で異常を認めない症例について、両親とともにトリオでエキソーム解析を行った結果、エカルディ・グティエール症候群において最近原因遺伝子であることが報告されたLSM11遺伝子にフレームシフト変異をホモ接合性に見出したが、両親にも同様に認めており、その卯木については否定的と判断した。また、全指と耳介に激しい凍瘡様皮疹を認める高齢男性例について、やはりエカルディ・グティエール症候群の原因遺伝子として知られるSAMHD1遺伝子の全長にわたって25%欠失を認めたため、全ゲノム解析にて更に精査中である。その他、全身紅皮症の高齢患者と幼小児期から爪甲異常と頭部角化性病変を示す中年女性について、自己炎症性角化症を疑ってエキソーム解析を行ったが、有意な変異を見出すことはできなかった。
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