研究課題
基盤研究(C)
中條-西村症候群は戦前から本邦で報告されてきた遺伝性炎症性難病ですが、近年、プロテアソームと呼ばれる蛋白質分解機構の異常が原因であることが判明し、世界各地から似た症例が多数報告されています。病態が明らかになるに従い、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患と同じくインターフェロン異常を呈する疾患であることがわかってきました。そこで本研究では、インターフェロン異常の存在が想定される凍瘡(しもやけ)様皮疹を呈し病理学的に液状変性を示す未診断症例について、網羅的ゲノム解析によって責任遺伝子変異を見出しその機能異常を明らかにすることで、新たな創薬ターゲットとなる機能的分子を見出すことを目指します。
3年前から継続して解析を進めている、IFN調節遺伝子の新規ヘテロ変異を見出した、乳児期から発熱と凍瘡様皮疹を反復する父子例について、本年もこの遺伝子を欠失させた培養細胞に変異遺伝子を導入しIFNで刺激後の応答遺伝子の発現をルシフェラーゼアッセイで確認する系を用い、様々に刺激や条件を変えて検証を行ったが、変異による差を認めず、患者由来細胞で認めたIFN応答異常がこの変異に関連すると証明することはできなかった。成人後に顔面の限局性脂肪萎縮で発症し、慢性的に発熱に伴って倦怠感や皮疹を繰り返すが、末梢血のmRNA発現解析でIFN signatureを認めた以外は血液検査で異常を認めない症例について、両親とともにトリオでエキソーム解析を行った結果、エカルディ・グティエール症候群において最近原因遺伝子であることが報告されたLSM11遺伝子に低頻度バリアントを見出した。現在その意義をデータベース上で検証中である。また、全指と耳介に激しい凍瘡様皮疹を認める高齢男性例について、やはりエカルディ・グティエール症候群の原因遺伝子として知られるSAMHD1遺伝子の全長にわたって25%欠失を認め、更なる精査中である。臨床的にVEXAS症候群が疑われた新規症例についても検討したが、UBA1遺伝子の体細胞変異は同定されなかった。また、全身アトピー性皮膚炎が疑われるもかゆみがなく、生検組織の病理組織学的検討にて液状変性を認め、自己炎症性角化症が疑われた症例において、魚鱗癬と自己炎症を含めたパネル遺伝子解析を行ったが、有意な変異は見出せなかった。
3: やや遅れている
遺伝性自己炎症疾患に対する遺伝子検査が保険適応となったことにより研究代表者への直接の症例相談が減ったため、新規遺伝子変異の探索の機会は自験例がほとんどとなり、既存のサンプルを用いた検討やデータのまとめ、報告が主な活動となった。
研究機関の延長が認められたことで、今後も引き続き、日本免疫不全・自己炎症学会の症例相談に相談された症例を含め、関連学会の抄録・発表症例に注意し、新規解析対象の集積に励むとともに、既存のサンプルを用いた検討やデータのまとめ、報告を進める。
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すべて 雑誌論文 (27件) (うち国際共著 2件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 11件)
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