研究課題/領域番号 |
19K08927
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 亀田医療大学 |
研究代表者 |
渡 智久 亀田医療大学, 総合研究所, 客員研究員 (50824736)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | MALDI-TOF MS / SILAC / 薬剤耐性菌 |
研究開始時の研究の概要 |
MALDI-TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)による薬剤耐性菌の迅速検出法を開発する。近年提唱されている安定同位体標識法を前処理に利用する検出法(SILAC法)は、抗菌薬原末の使用による煩雑な操作や薬剤耐性の判定が目視であることに課題がみられ、臨床現場での実用化に至っていない。本研究では、①SILAC法に薬剤ディスクを使用して簡便化を図ること、②SILAC法で処理した臨床由来の薬剤耐性株のマススペクトルをリファレンスライブラリーに登録することの2つによって、薬剤耐性菌の検出の自動化実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、1)SILAC法に薬剤ディスクを使用して簡便化を図ること,2)SILAC法で処理した臨床由来の薬剤耐性株のマススペクトルをリファレンスライブラリーに登録することの2つによって、薬剤耐性菌の検出の自動判定を可能にすることを目的としていた。しかし、臨床分離株の測定では、MSSA株を高率に識別することはできるが、MRSA株の判定能が低確率であるという課題が残されたため、解析方法の変更を検討することとした。 その結果、当初のMRSAのマススペクトルのリファレンスライブラリーへの登録による自動判定を中止し、ブルカー社のCliniProtools 3.0を使用し、薬剤耐性菌の判定法を確立できるかを検討した。 1)Normal(通常のアミノ酸含有培地)、2)Heavy(安定同位体含有培地)、3)Heavy+薬剤ディスクの3種類の培地を用いて振盪培養し、その培養液をエタノール・ギ酸抽出法で処理したサンプルをMALDIバイオタイパーで測定した。ESBLは、MRSAとは薬剤への耐性機構が異なり、抗菌薬を加水分解するβラクタマーゼを菌体外に放出して薬剤耐性を獲得する。そのため、MRSAとは異なる前処理が必要と予測していたが、実際にはMRSAと同じプロトコルでnonESBLと区別することが可能であった。 最終的に、MRSAとMSSA、ESBLとnonESBLのマススペクトルを用いて、CliniProtools 3.0のGA、SNNおよびQCの各統計処理によってモデルリストの作成に成功した。今後の課題としては、ESBLは、薬剤耐性パターンが異なる複数の遺伝子型が存在することや同一株で複数の遺伝子型を有するなどの特徴がみられるため、モデルリスト作成に使用する菌株選択が検出能に影響する可能性がある。そのため、モデルリスト作成に使用する菌株選択の影響を明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MALDIバイオタイパー(ブルカージャパン)でEscherichia coliと同定されたESBL 60株、nonESBL 60株を対象菌株とし、CliniPro tools3.0を用いたESBLの検出法の開発をおこなった。 ESBLとnonESBLの各60株を1)Normal(通常のアミノ酸含有培地)、2)Heavy(安定同位体含有培地)、3)-1Heavy+CPDXディスク、3)-2Heavy+CPDX/CVAディスクの4種類の培地で振盪培養した培養液をエタノール・ギ酸抽出法で処理したものをサンプルとしてMALDIバイオタイパーで測定した。その後、ESBLとnonESBLの各60株のうち、エクセルのランダム関数で抽出した各30株のマススペクトルを用いて、CliniPro tools 3.0のGA、SNN、QCの統計処理によってクラスタリングを行った(モデルリスト)。このモデルリストを使用して、残り各30株をCliniPro tools 3.0で解析したところ、③-1Heavy+CPDXディスクが最も高い鑑別性能を示すことが判明した。 また、ESBLは、シカジーニアスESBL遺伝子型検出キット2(関東化学)を用いて、ESBLの遺伝子型を特定した。その結果、CTX-M chimera + TEM が4株、CTX-M-1groupが7株、CTX-M-1group + CTX-M-9 groupが1株、CTX-M-1group + CTX-M-9group + TEMが2株、CTX-M-1group + SHV + TEMが1株、CTX-M-1group + TEMが11株、CTX-M-9groupが20株、CTX-M-9group + TEM が14株の8パターンが特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、モデルリスト作成に使用する菌株の構成による検出精度の違いを明らかにする。さらに、ESBL株を60株追加してCliniPro tools 3.0のESBL検出能の最終的な評価を行う。
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