研究課題/領域番号 |
19K08933
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
河野 利恵 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (20468002)
|
研究分担者 |
緒方 正男 大分大学, 医学部, 教授 (10332892)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | ナノポアシークエンサー / バクテリオファージ / ヒトヘルペス6B / 造血幹細胞移植 / 腸内細菌 / 腸管粘膜障害 / 細菌感染 / 消化管粘膜障害 / ウイルス感染 / ウイルス感染症 / ヒトヘルペスウイルス6B / 同種造血幹細胞移植 |
研究開始時の研究の概要 |
造血幹細胞移植後患者は極度の免疫不全状態に陥る。そのため、健常人では考えられないウイルス感染症を引き起こす。中には、ウイルス感染症が強く疑われるのにもかかわらず陰性の場合もある。 ナノポアシークエンサーには、膜状に配置されたタンパクポアをDNA分子が通過する際に生じる電流で配列を解析するという次世代シークエンサーと違った新しい原理が使用されている。ナノポアシークエンサーは、軽量、安価しかもハイスペックなコンピューターを必要としないという点より中規模病院施設でも使用可能である。本研究は、ナノポアシークエンサーを用いることにより簡便な造血幹細胞移植後の網羅的ウイルス感染検出を行う。
|
研究実績の概要 |
1,ナノポアシークエンサーの精度管理:a,既知コピー数バクテリオファージからDNAを回収する。そのDNAをナノポアシークエンサーにアプライしリード数を測定する。リード数より1mlDNA溶液に含まれるバクテリオファージのコピー数を算出。実際使用したファージのコピー数とナノポアシークエンサーより算出されたコピー数を比較検討した。b,既知コピー数ヒトヘルペス6Bウイルス(ATCC株)よりDNAを回収する。そのDNAをナノポアシークエンサーにアプライしリード数を測定する。リード数より1mlDNA溶液に含まれるヒトヘルペス6Bウイルスのコピー数を算出。実際使用したヒトヘルペス6Bウイルスのコピー数とナノポアシークエンサーより算出されたコピー数を比較検討した。(結果)バクテリオファージを用いた実験では、「バクテリオファージの培養に用いた大腸菌DNAがナノポアシークエンサーの測定系(ナノポア)を占有してしまったため思うようなリード数を得ることができなかった。しかし、ヒトヘルペス6Bウイルスを用いた実験では、定量PCR法での測定結果と比較しても遜色のないリード数を得られた。 2,造血幹細胞移植後患者から得られた血漿、全血DNAからの感染性微生物の検出 大分大学医学部附属病院で造血幹細胞移植を行った患者3名から毎週1回のEDTA採血を施行し、血漿、全血DNAを回収(倫理員会承認済み)する。ナノポアシークエンサーを用いてそのDNAに含まれる感染微生物DNAのリード数を測定し、検出できた感染微生物の種類とコピー数を確認した。(結果)造血幹細胞移植直後、患者血液より大量の腸内細菌DNAが確認された。その中にはサルモネラなど病原性のあるものも含まれていた。移植後発熱やGVHDなのが認められた患者DNAからは、良好だった患者DNAよりも多くの細菌DNAが確認された。また、ウイルスDNAは確認されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1,新型コロナ流行のための遅延:コロナウイルス感染症の流行のため、2020年から約2年間海外試薬が全く入ってこない状態が続いた。ナノポアシークエンサー(フロング)と試薬は、オックスフォードナノポアシークエンス社(イギリス)からの輸入になる。また、本研究に使用するキアゲンの核酸抽出キットは、コロナウイルスのPCRに用いられたため約2年間まったく手に入らない状態が続いた。さらに本研究で用いていたフィルター付きチップもコロナウイルスPCRに必要なために品薄となっていた。 実験計画では「患者検体を採取したらすぐに核酸抽出を行う」ことになっている。キアゲンの核酸抽出キットが手に入らなかったため、約2年間分の患者検体の採取が滞った。2023年度は、コロナの鎮静化に伴いキットの購入は可能になった。しかし、大分大学医学部付属病院で同種造血幹細胞移植を行う患者数は限られている。測定適応となる患者数に限りがあるため、2023年度内にナノポアシークエンサーによる測定には至らなかった。 2、ナノポアシークエンサーの技術上の問題点:a、ナノポアシークエンサーにアプライ可能なサンプル量は極めて微量(10μl程度)である。そのため、検体処理の段階でいかに濃縮するかが問題となる。b、ナノポアシークエンサーは、ウイルスDNAの検出感度が悪い。その理由としてウイルスのゲノムが細菌と比較して小さいためではないかと思っている、逆に細菌DNAの検出は優れている。
|
今後の研究の推進方策 |
1,検体の採取:2023年度までに採取して測定に至らなかった検体が存在する。また、ヒト倫理員会申請の延長によって、さらに検体採取を可能とする。これらの検体の測定を行う予定である。 2,ナノポアシークエンサーにアプライできる検体量:ナノポアシークエンサーにアプライできるサンプル量は極めて微量(23.5μl)である。アプライする核酸(DNA・RNA)には、ポアを通過させるためのアダプターを付着する。付着のためにはオックスフォードナノポアテクノロジー社が開発した特殊なキットを使用しなければならない。そのため、アプライできる検体量を増加させることは不可能である。 3,2の問題を解決するため、ナノポアシークエンサーにアプライする前のDNA検体を濃縮することを考えている。現在、200μlの血液サンプルから100μlのDNAを回収、そのうちの23.5μlをナノポアシークエンサーの測定に使用している(1/2に濃縮)。子の濃縮率を上げる予定である。濃縮の方法としてa、磁気ビーズを用いた濃縮 b、回収したDNAをエタノール沈殿によって濃縮する。濃縮を行った場合には不純物の混入が問題となる(特にbのエタノール沈殿を行った場合)。不純物が次のアダプター付着反応を阻害ため、一度液体クロマトグラフィーを用いアダプター付着反応に支障がない純度が保たれているか確認してみる。 4,造血幹細胞移植後の検体(特に予後不良症例)に多数の病原性腸内細菌が確認された。当初の申請目的とは多少視点がずれるが「腸内細菌の菌交代現象が造血幹細胞移植の予後を査収するのではないか」という極めて興味深い所見である。これに関しても今度調査を進めていくつもりである。
|