研究課題
基盤研究(C)
インフルエンザウイルス(IFV)に感染した場合、しばしば免疫系が過剰に活性化してしまうことが知られている。私たちの研究により、免疫担当細胞の一つであるマクロファージに発現する新しい受容体IgSFR2が、IFVを認識することが明らかになった。加えて、IgSFR2は単なる病原体センサーとして機能するだけではなく、IFVが細胞に感染する際のウイルス受容体として働く可能性が示唆されている。そこで、本研究ではIgSFR2のIFV受容体としての機能について明らかにするとともに、IFV感染モデルマウスを用いた検討により、IFV感染症の重篤例にみられるインフルエンザ肺炎の新たな治療法開発を目指す。
これまでの研究により、新規自然免疫受容体であるIgSFR2は、インフルエンザウイルス(IFV)のヘマグルチニンを糖鎖修飾依存的に認識することが明らかになっている。そこで、今回の研究では、主にIgSFR2のin vivoにおける機能的阻害によりインフルエンザ肺炎を実験的に治療できるか否かを検討した。その結果、IgSFR2リガンドである糖鎖モチーフを投与したIFV感染モデルマウスでは、IFV感染のみの実験対照群に比較して肺中ウイルス力価が有意に減少した。また、実験動物用CTを用いた解析により肺組織障害の発生も顕著に抑制されていることが明らかになった。
今後、IFV感染モデルマウスに対するIgSFR2リガンド投与条件の最適化を行うことにより、IFV感染症の重篤例などにみられるインフルエンザ肺炎の新たな基礎的治療アプローチを開発することができると期待される。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因であるSARS-CoV-2の表層に存在するSタンパクも豊富な糖鎖修飾を受けることが知られている。このため、IFVと同様にSARS-CoV-2に対するIgSFR2依存的なウイルス認識機構が成立する可能性も示唆されることから、本研究を発展させることにより、COVID-19に対する基礎的治療アプローチをも提供できる可能性があると考えている。
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