研究課題/領域番号 |
19K08966
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
打矢 恵一 名城大学, 薬学部, 教授 (70168714)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肺Mycobacterium avium症 / クラリスロマイシン / 薬剤耐性 / Mycobacterium avium / 薬剤感受性 / pMAH135プラスミド / VNTR型別解析 / ISMav6 / Mycobacterium avium感染症 / 抗菌薬 / 薬剤抵抗性 / ゲノム解析 / 肺MAC症 / 治療抵抗性 / 増加要因 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,わが国において肺MAC症の増加が著しい。肺MAC症に対する薬物治療の効果は低く,その原因はMycobacterium aviumの抗菌薬に対する抵抗性(低感受性)や耐性の獲得が大きな要因である。このような罹患率の増加や治療効果の低さが,本感染症の社会的・学術的な問題となっている。本研究では,国内での増加要因を明らかにするとともに,M. aviumの抗菌薬に対する抵抗性や耐性化に関わる遺伝学的な特徴を解明する。そして,これらの結果を治療に難渋する肺MAC症の予防および治療に応用する。
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研究実績の概要 |
2022年度の本研究課題の研究成果について、当該年度の研究実施計画に基づいて、肺Mycobacterium avium症患者に対してClarithromycin(CAM)、Rifampicin(RFP)、Ethambutol(EB)による標準治療を行った後に分離された患者由来M. avium 株、また対象として肺M. avium症と診断された後、薬物治療を受けていない患者由来株を使用して薬剤感受性の比較、検討を行った。その結果、以下の研究成果が得られた。 1.抗菌薬使用後の耐性化の割合:使用菌株は、国立病院機構東名古屋病院において標準治療を行った後に分離されたM. avium 40株、また対象として薬物治療を受けていない患者由来M. avium 40株を使用した。各薬剤に対するMIC値の測定を行った結果、CAMに対してMIC>32の耐性株は、治療群では7株(17.5%)、未治療群では2株(5%)見られ、治療群の方が耐性株の存在率が有意に高かった。RFPに対してMIC>8の耐性株は、治療群では4株(10%)、未治療群では3株(7.5%)見られ両者に有意差は無かった。EBに対しては、ほとんどが耐性株であったため、MIC>32を高度耐性株として判定した結果、治療群では10株(25%)、未治療群では4株(10%)見られ、治療群の方が高度耐性株の存在率が有意に高かった。以上の結果から、とくにキードラックであるCAMに対して、治療を行うことで17.5%が耐性になることが判った。 2.CAM耐性に関わる遺伝子の変異解析:CAMについて、耐性と判定された治療群の7株と未治療群の2株を用いて、23S rRNAのドメインV領域における特定塩基の変異を調べた。その結果、1株を除いてすべてにドメインV領域の2058と2059番目のいずれかのアデニンに点変異が起きていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の本研究課題の目的は、治療に難渋する肺M. avium症の薬物治療の観点から、抗菌薬使用後の耐性株と感受性株の比較、検討を行うことにより、薬物治療後に耐性化した菌株の割合を調べるとともに、耐性株と感受性株のゲノムを比較することにより、耐性化に関わる遺伝学的な特徴や耐性化しやすい菌株の特徴を調べることであった。当該年度の研究実施計画に基づいて行った研究の進捗状況から、下記の理由により現在までの達成度については、やや遅れている。 2022年度の研究実施計画に基づいて、肺M. avium症患者に対してCAM、RFP、EBの3剤による標準治療を行った後に分離された患者由来M. avium 株、対象として薬物治療を受けていない患者由来株と比較を行うことで各薬剤に対する耐性化について調べた。その結果、CAMとEBについては治療を行うことで耐性化が進み、とくにキードラックであるCAMに対して17.5%が耐性になることが判った。さらに、CAMに対する耐性は、1株を除いてすべてに23S rRNAのドメインV領域の2058と2059番目のいずれかのアデニンに点変異が起きていた。 しかし、2022年度の研究実施計画であった抗菌薬使用後の耐性株と感受性株のゲノムを比較することにより、耐性化に関わる遺伝学的な特徴や耐性化しやすい菌株の特徴を調べる予定であったが、実施することが出来なかったため今後の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、研究実施計画に基づいて、抗菌薬使用後の耐性株と感受性株のゲノムを比較することにより、耐性化に関わる遺伝学的な特徴や耐性化しやすい菌株の特徴を調べる予定である。具体的には、肺M. avium症患者由来CAM、RFP、EB耐性のM. avium 株および各薬剤感受性のM. avium 株について、以下のように比較ゲノム解析を実施する。 1.薬剤抵抗性に関連する遺伝子の検索:薬剤抵抗性や耐性に関連したARG-ANNOT検索ツールを利用して、M. aviumのゲノム上に存在する薬剤抵抗性に関連する既知遺伝子の検索を行う。さらに、得られた遺伝子の変異箇所をSNPs(single nucleotide polymorphisms)解析により調べ両者を比較する。 2.SNPsに基づいた系統樹解析による比較:両者のゲノム上に存在する共通遺伝子の SNPs解析を行う。その後、系統樹等を作成し両グループ由来株の遺伝学的な違いを調べる。 3.特異的遺伝子の検出と機能分類:Nucmerを使用して、肺M. avium症患者由来株が保有する特異的遺伝子の検索を行う。その後、NCBI検索サイトを利用して、特定した特異的遺伝子の塩基配列からコードしているタンパク質を推定する。さらに、推定されたタンパク質の機能から薬剤抵抗性に関わる遺伝子を検索する。また、特異的遺伝子の機能分類を行うことにより遺伝学的な特徴を調べ、薬剤抵抗性との関連性を検討する。 以上のような比較ゲノム解析を行うことにより、耐性化に関わるM. aviumの遺伝学的な特徴や耐性化しやすいM. aviumの特徴を調べる。
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