研究課題
基盤研究(C)
結核制圧は、世界の保険医療分野の最重要課題の一つであり、成人の特に肺結核で効果のある結核ワクチンの開発研究が世界中で行われているが、依然として実用化の目途が立ったものはない。その大きな要因は、結核の病態を反映する指標やワクチン効果と相関する原因細胞などが不明であることと考える。結核治療のブレイクスルーには、結核の発症という非常に複雑で大規模な宿主と結核菌の攻防をより詳細に把握することが必要と考え、唯一ヒト結核病変が再現できるカニクイザルを用いて、結核菌感染から潜伏・発症の様々なステージの免疫学的・病理学的解析を行い基礎データを回収する。
現在唯一実用化されている結核ワクチンであるBCGの予防効果について、ヒト結核病態を再現できるカニクイザルを用いて評価した。本実験から①BCGは全身性結核には非常に強い防御効果を示すものの、肺結核に対する効果は弱いこと、②BCGのワクチン効果と相関する結核抗原特異的免疫応答や肺局所への浸潤細胞は同定されなかったこと、③BCGワクチンと肺への肉芽腫形成との関連性は認められないことを見出した。また血漿のメタボローム解析からBCGのワクチン効果を示さなかった個体ではメチオニン・システイン代謝経路に異常が認められた。今回のBCGワクチンの結果から肺結核にも効果を示す追加免疫法の開発が必要である。
現在、15種類のワクチン候補が第2相臨床試験のパイプラインに乗っているが実用化されたものはない。また、結核ワクチンの防御効果と相関する指標がないことが開発を困難にしていると考えられる。そこで本実験では、ヒト結核病変を再現でき、また後ろ向き実験も可能なカニクイザルを用いて結核感染実験をすることで結核病態やワクチン効果に相関する要因を解析し、結核の撲滅に向けた基盤づくりを目指した。また、ヒト結核モデルであるカニクイザルを用いた動物実験を行うことは、ヒトへの実用化をも視野に入れた有意義な結果を導き出すことが可能であり、その成果として医学領域に大きく貢献できる知見が得られることが期待される。
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