研究課題
基盤研究(C)
YAP/TAZの発現変化が癌幹細胞様性質獲得に寄与し、さらに免疫による癌細胞死から回避している、という仮説に基づいて、その他の消化器癌において同様の研究を進めてきた。また、PDL-1, PDL-2による癌免疫逃避機構とYAP/TAZの発現変化が関与する基礎的実験結果を得ている。本研究では、消化器癌における腫瘍抑制シグナルHippo pathway の構成成分YAP/TAZによる癌幹細胞性の制御機構および免疫回避機構について分子生物学的に紐解き、臨床的特性と対比することにより癌幹細胞および癌免疫をターゲットにした新しい癌治療法の確立を目指す。
膵癌では初期症状として膵管閉塞に伴う膵内分泌機能低下・高血糖を来すことがよく知られているが、腫瘍環境としての高血糖は膵癌細胞株においてYAP/TAZの発現上昇を引きおこし嫌気的解糖を促進することを同定した。また、高血糖は癌幹細胞マーカーでもあり抗がん剤抵抗性にも寄与するABCB1の発現を亢進させた。このABCB1の発現上昇はYAP/TAZの発現抑制もしくはYAP/TAZ阻害剤により抑えられ、抗がん剤抵抗性も改善することを同定した。以上のように難治癌膵癌においては、YAP/TAZの発現上昇はABCB1といった癌幹細胞マーカーの発現を増加させ抗がん剤抵抗性に寄与することを明らかにした。
ヒト固形癌では腫瘍抑制シグナル伝達系Hippo pathwayの破綻による転写因子YAP/TAZの発現上昇が高頻度に認められており、近年発がんおよび癌進展におけるHippo pathwayの破綻が注目される。Hippo pathwayの破綻はYAPとTAZの発現上昇を引き起こすが、YAP/TAZの発現上昇はABCB1といった癌幹細胞マーカーの発現を増加させ抗がん剤抵抗性に寄与することを明らかにした。
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