研究課題/領域番号 |
19K09263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
石田 成吏洋 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (90397331)
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研究分担者 |
土井 潔 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40305579)
梅田 悦嗣 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (10623332)
中村 康人 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (60889369)
小椋 弘樹 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (30795414)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | メイズ手術 / 左房機能 / MRI / 心房細動 |
研究開始時の研究の概要 |
心房細動に対して、心機能改善と血栓形成回避を目的にメイズ手術を行うが、メイズ手術術後症例の中には左房機能が低下する、あるいは血流停滞によって血栓が形成される場合がある。 左房機能や形態の体表的評価法の経食道心エコーや心臓造影CTは、検査に侵襲を伴うため繰り返し行う事が困難である。 本研究では三次元的な左房の形態・動きと左房内血流の評価が可能で、ほぼ無侵襲で繰り返し検査が可能な心臓MRIを用い、メイズ手術前後の左房形態・壁運動や血流の経時的推移を追跡して左房機能の評価法を確立し、次いで術後の抗凝固療法が必要な期間や、一過性心房細動に対するメイズ手術の適応について検討する。
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研究実績の概要 |
心房細動に対するメイズ手術では心機能改善と血栓形成回避を目的とするが、術後に左房機能低下や血栓形成を認める事がある。しかし、メイズ手術前後の左房の経時的変化を追跡した報告は少なく、メイズ術後の左房機能低下と血栓塞栓症発症の病因は未だ解明されていない。また、メイズ手術後の抗凝固療法は何も指針が示されていない。心臓MRI検査を用いて左房機能の推移や血栓形成のメカニズムを解明することで、①メイズ手術後の抗凝固療法に関する新たな指標、②心房機能の保たれている一過性心房細動に対するメイズ手術適応基準の新たな指標、③心房機能を低下させないメイズ手術の術式を開発するための新たな知見、の三つを提供する事が本研究の目的である。 目標①;メイズ手術前後に心臓MRIを用いて左房機能を計測する。術前、術後1か月、術後6か月、術後1年における経時的変化を観察する。動画MRI撮影法で各左房周期の左房内腔をトレースして左房容積を計測し、受動的、能動的左房駆出率を算出する。僧帽弁通過血流速度を計測し、左房容積を算出する。左房内での3次元的血流情報を把握し、流体力学を用いた左房内渦流分布を評価する。3D経食道心エコー、3D造影CTと心臓MRIの測定値を比較し、心臓MRIの精度性を検証する。目標②;目標①のデータを解析し、メイズ手術後の左房機能、左房内血流の推移を明らかにする。また、それら推移と集積した患者データを分析し、術後の合併症イベント、心機能回復や血栓症と左房機能との関連因子を検索する。 術前持続性心房細動に対してメイズ手術を施行し、術後洞調律に復帰した5症例の術直後左房計測では、左房駆出が認められるものの、その程度はコントロール群と比較して低値であった。 今後、更に症例解析を進め、遠隔期における左房駆出回復の有無も検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究では研究期間の3年間で対象症例を総計30例とし、追跡期間は術前から術後1年までで、術前、術後1か月、術後6か月、術後1年にて心臓MRI検査で左房の経時的変化を観察して患者データの集積を行い、メイズ手術前後の左房機能、左房内血流を評価する予定としている。研究立案時においては、当科では例年10例程度の心房細動に対するメイズ手術を実施していた。しかしながら、研究実施期間においてメイズ手術の適応症例が少なく、かつ、適応があっても医学的見地よりメイズ手術を実施しなかったため、メイズ手術実施症例が少なく、手術実施かつデータ集積が遅延しているのが現状である。 コントロールとしてメイズ手術を施行していない心臓手術症例において、術前後に左房計測を行った。左房拡張末期容積、左房収縮末期容積、左房一回拍出量、左房駆出率を計測した。心房細動を合併しない洞調律の症例においては、術前には心周期における左房容積の経時的変化としては二峰性であった。術後も同様に左房容積曲線は二峰性を呈しており、左房収縮能が維持されていることを確認した。また、心房収縮期と同時期の左室容積を比較すると、心房収縮期の左房駆出量と左室容量増加分がほぼ一致し、左房収縮による拍出は、ほぼ順行性に拍出されていることが示唆された。 また、慢性心房細動に対してメイズ手術を実施し、術後洞調律に復帰した5症例において、術前後に左房計測を行った。術前の左房容積曲線は二峰性を呈しておらず、左房収縮能の消失を示した。術後の左房容積曲線は二峰性を呈しており、左房収縮能が回復した事を示唆する所見を確認できた。しかしながら、左房駆出率や左房収縮期の容量変化率はコントロール群と比較して低値であり、左房収縮は回復しているものの不十分である可能性が考えられた。これらの症例において、遠隔期に左房収縮機能の改善がみられるか否かを評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
循環器外科の診療実態として、開心術症例は基本的に循環器内科で加療や経過観察されている症例が手術適応を満たすと判断された場合に心臓外科に紹介となり、手術が実施されるのが通例である。当院でも同様の治療戦略のもと、心疾患の治療が行われている。しかしながら現段階では本研究の目標とする症例数を満たせていない。COVID-19蔓延による手術治療群の変化や、経カテーテル的アブレーションによる心房細動治療の発展によるメイズ手術適応群の変化などが理由として考えられる。今後、心房細動に対するメイズ手術症例を確保するために、引き続き当院及び関連・紹介施設の循環器内科医との間で心房細動治療におけるメイズ手術の適応及び有効性を再度確認して共有し、早期診断、確実・適切な外科的治療介入を心がけることで本研究対象症例の獲得に努める。
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