研究課題/領域番号 |
19K09383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
小口 勝司 昭和大学, 医学部, 名誉教授 (50129821)
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研究分担者 |
小山田 英人 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (50266160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 悪性高熱症 / 1型リアノジン受容体 / 遺伝子変異体 / 変異体 / リアノジン受容体 / malignant hyperthermia / ryanodine receptor / cDNAカセット / cDNA cassette / カルシウムイオン / calcium ion / malignant hyperthe / 遺伝子診断 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性高熱症(malignant hyperthermia、MH)は、揮発性の全身麻酔薬が引き金となる、骨格筋の拘縮を伴って高熱を発する優性遺伝形質の疾患である。発症初期に速やかな診断が必要であり、その後の処置が不適切であるとショック状態を引き起こし、現在でも高率(約15%)で死の転帰をとる。ヒトMH疾患の症例報告に、リアノジン受容体1型(RyR1)をコードする遺伝子上に200ヶ所以上の変異部位が見いだされている。本研究では、未だに増え続けるMH変異部位に対応した全てのMH型RyR1変異体を作製して、強制発現させた細胞株を樹立して、MHの遺伝子診断の実験的な根拠を提示する。
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研究実績の概要 |
細胞内カルシウム(Ca2+)放出チャンネルである1型リアノジン受容体(RyR1)をコードするcDNAの塩基配列に、悪性高熱症(malignant hyperthermia、MH)患者の症例報告にあるアミノ酸配列の変異に相当する塩基置換を施したMH型RyR1cDNA変異体を作製するためのPCRプライマーを、Web上の塩基配列デザインツール等を用いて、デザインし、PCRによるRyR1cDNAカセットを利用したMH変異部位特異的変異体の作製を行ってきた。さらに、これらをテトラサイクリン誘導性に外来遺伝子発現の制御が可能な培養細胞株(Flp-In TRex293等)に遺伝子導入して、数種のMH型RyR1発現細胞株を樹立した。このMH型RyR1変異体発現細胞に対して、正常なコントロールとなり得る野生型(Wild Type、WT)RyR1を発現した細胞における細胞内Ca2+動態と比較しながら薬物感受性の変化等をスクリーニングして解析するシステムの構築を目指して実験を続けている。 尚、このMH型変異を導入したRyR1cDNAカセットを使って共同研究(鈴木団:大阪大学、山澤徳志子:慈恵医科大学、順天堂大学、昭和大学、他)を行ない、MH病態における暴走的な熱産生メカニズムの起源が、骨格筋細胞のCa2+放出チャンネルであるRyR1において、遺伝的アミノ酸変異により、体温上昇(発熱)に対して過敏に応答してしまう「熱誘発性Ca2+放出(Heat-induced Ca2+ release)機構」にあることを新たに発見して公表することができた。このメカニズムは、一部の労作性熱中症の発症とも関連する事から、新たな治療薬の開発に繋がると期待されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年1月から始まった国内での新型コロナウィルス感染のパンデミック期においても、当該研究におけるDryな実験系である11個に分割して利用できる様にカセット構造化した各RyR1cDNAカセット内でMH型変異を導入するためのPCRプライマーの配列をデザインする実験は継続することが可能であった。しかし、次に続いて行う実際に変異体を作製するWetな実験系を継続的に進められない状況が長期間(約3年間)に渡って続いていた。 加えて、昨年度に再利用することが可能になった、カセット構造化したDNA用PCRプライマーをデザインできるWebツール「DNA sequence Design Supporter(東京理科大学・基礎工学部)」が東京理科大学・基礎工学部の再編(2021年度、https://www.tus.ac.jp/today/archive/20190701002.html)とそれに伴う新規サーバーへの移行過程で削除されて利用できなくなり、新たなPCRプライマーのデザイン等がマニュアル(=目視下の手作業)になってしまい、多大な時間的な量力を必要とする様になってしまった。その後のこちらからの再開希望の問い合わせに対して山登一郎先生(東京理科大・基礎工学部/名誉教授)、田村浩二先生(東京理科大・先進工学部/教授)、ならびに安藤格士先生(東京理科大・先進工学部/准教授)らのご尽力により、2022年10月18日より、再び利用することが可能(https://www.rs.tus.ac.jp/tando/OPFU/yama/public_html/test/ddsp.htm)となり、現在はcDNAカセットを用いて実験が再び進められるように状況が回復した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年と同様に、細胞内Ca2+放出チャンネルであるRyR1をコードする全長cDNAに、カセット構造化したCsRyR1cDNAの塩基配列にMH患者の症例に報告されているアミノ酸変異に相当する塩基配列の置換を行って、MH型RyR1cDNA変異体の種類の追加を目指す。 一昨年始めからの続く国内でのCOVID-19の感染パンデミックも、現在ではウイルス自体の変異とワクチンや治療薬の普及が進み重症化率も低下したことから、2023年5月8日から感染症法上の位置づけが2類相当から5類と移行され、本学内でも「Withコロナ」中の仕事改革とも言うべき新型コロナ検査の方略の見直しが行われて、当該研究の研究分担者が兼務している「昭和大学新型コロナウィルス対応PCRセンター」の業務である新型コロナウィルス感染の定期のスクリーニングPCR検査も、当初は困難であった迅速な検査が国内の外部検査機関に委託する事が十分に可能となり、さらに簡易な抗原検査等へも移行される様になっている。 したがって、新型コロナウィルス感染症の検査に要していた膨大な時間的量力等が大幅に軽減され、先のDryな実験系(変異体作製用プライマーのデザイン等)に続くWetな実験系(RyR1変異体の作製と株化発現細胞の樹立等)への継続的な速やかな実施も可能になると考えており、今後はこの実験の遅れを取り戻すように努力する。 尚、DNA用PCRプライマーのデザインができる新たなWebツールとして「Silent Mutator-Silent mutagegesis tool (https://molbiotools.com/silentmutator.php)」の使用が可能となり、より多くの制限酵素種を加えて、PCRプライマーのデザインができるようになり、より効率的に変異部位の確認が行える様になると期待される。
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