研究課題
基盤研究(C)
近年、がんの新しいドライバーメカニズムとしてスーパーエンハンサー異常が提唱された。腫瘍形成に寄与する異常なスーパーエンハンサー機構の全容と、その出現タイミングを明確に解明することが悪性脳腫瘍の新規治療開発に重要と考えた。本研究では悪性脳腫瘍の形成過程において、経時的にスーパーエンハンサー領域と抑制型ヒストン修飾領域の変化を解析し、EZH2とスーパーエンハンサーのクロストークメカニズムを解明することを目的とする。本研究から得られた知見から予後不良疾患であるIDH野生型悪性脳腫瘍における、EZH2阻害剤とJQ1の併用新規治療法の開発につながることを期待して上記研究計画を進める予定である。
急速にビッグデータが蓄積したものの、未だ大部分の悪性脳腫瘍の腫瘍形成メカニズムは明らかになっておらず、これまでにはない新規メカニズム概念の探索が必須である。エピゲノム機構は遺伝子発現を活性化(オン)する修飾と抑制(オフ)する修飾が精密に制御されており、そのバランスが崩れることでがんの発生に寄与する。近年がんの新規ドライバーメカニズムとしてスーパーエンハンサー形成が提唱された。Myc分子等の転写因子がゲノムの立体構造を変化させ、がん関連遺伝子の遺伝子発現を亢進し、がんの形成に寄与している。本研究では脳腫瘍自然発生マウスモデルを用いて異常なクロマチン構造変化を経時的に解明する。
本研究ではこれまで研究モデルが限られていた脳腫瘍分野で新規性の高い脳腫瘍自然発生マウスモデルを用いて、脳腫瘍形成過程における経時的な解析を行うことができる点で意義が大きいものと考える。脳腫瘍ではこれまで腫瘍検体を用いた網羅的解析が主に進められてきたが、腫瘍検体を用いた解析では悪性転化した結果を見ている可能性があり、腫瘍形成過程を経時的に解析することは困難である。前腫瘍細胞の段階からGFPでトレースできる本モデルを用いてダイナミックなエピゲノム異常の解明を試みることで、新規治療戦略につながる可能性があるものと考える。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Acta Neuropathologica Communications
巻: 8 号: 1 ページ: 8-19
10.1186/s40478-020-0882-4